375.王反対派
アルザ議員は発言台に立つと、持っていた原稿を開き議長の方向に向き意見を述べ始める。
「先ほど、多くの方が彼の国王に賛同されたと思われますが、私はどうにも彼の国王が信用なりません。というのも、彼はこの国で生まれ育ち、この国を本当に愛している我々と違い、異世界から召喚されたどこの馬の骨かわからないそんな人間なのです。そんな人間にこの国のすべてを任せて良いのでしょうか?そして本当に彼はこの国を守ろうとしているのでしょうか?そんな彼に我が国の命運を任せて良いのでしょうか?今後も私はそう考えてしまいます。皆さまいかがでしょうか?」
確かに彼の言う通り、この国どころかこの世界に何の縁もゆかりもなかった人間が急に現れたかと思えば、国のトップになり、国の全権を握ったとなれば、当然そんなものを信用していいのか?となってもおかしくはない。
元居た世界でも、同じような事が起きれば同じような意見が出るだろう。
「議長!」
そのアルザ議員の演説が終わってすぐに、対岸にいた上院議員が勢いよく議長に向けて手を上げた。
「どうぞ」
「ありがとうございます。アルザ議員、仰る通り陛下は我々が知らない異世界からいらっしゃった方だ、その方に急に国王になって頂き、この国を救えというのは、確かに変な話だ。しかし、陛下がこれまで国内外に示して来た力を知ってのことか?さらに陛下が我が国の発展に力を注いできたのも知ってのことか?さらにこれまで陛下がいらっしゃらなかったら今この国すらなかったかもしれないのだぞ!」
アルザ議員はその上院議員が言い終わると、静かに手を上げる。
「アルザ議員」
「確かに、仰る通り、彼が来てから、我が国の急激な発展と、帝国軍を我が国の領土内から一掃するどころか、帝国首都を爆撃するという前代未聞のことまで成し遂げられた。それにとどまることなく、我々にとって未知の国であった出雲国との外交関係を結ぶどことか同盟国としてこちら側の陣営に引き入れた。こういったことから彼がこの国に尽力してくれたことは感謝の念が絶えない。しかし……」
「彼とはなんだ!陛下とお呼びしろ!」
「恩知らずものめ!」
「不敬罪だ!」
「貴様は何様のつもりだ!」
アルザ議員が俺を“彼”と呼び続けている事に対して、野次が飛ぶ。
「静粛に!静粛に!」
その野次で発言が停止されてしまった事をみて、議長がその場を諫める。
ある程度静かになると、野次の中にあった不敬罪かどうかの判断を得る為、議長は俺の方に振り返る。
ちらりと横を見ると、エレオノーラは剣を鞘から静かに抜き、不敬者を切らせてくれといいたそうな視線を俺に送ってくる。
「エレオノーラ、しまって」
「しかし!」
「いいんだ、彼の話を聞かせてくれ」
「ご主人様がそうおっしゃるのでしたら」
エレオノーラは不服そうにしながらも、剣を鞘にしまう。
「議長、議論を続けさせて」
「はい、アルザ議員。訂正の上、発言を続けてください」
「これは、これは、大変失礼いたしました。訂正してお詫び申し上げます」
アルザ議員は俺の方を向き深々とお辞儀をする。




