33.後宮へ
メリアや部下と思われるサクラとミントはセレナを諫めようとするがいっこうに収まらない。
そんな時にも関わらず俺はサクラとミントに不躾な視線を送っていた。
サクラは名前からも想像できるように、元いた世界の日本人のようにきれいに手入れされたセミロングの黒髪で体つきも整っており特に胸は大きく膨らみ、時々揺れている。
一方のミントは、目は赤く髪色は黄緑色と今までの自身の思っていた美人とは掛け離れていた、さらにサクラに負けないぐらい胸も大きい。
ただ二人に共通しているのは、普通の人間にはないオーラのような“何か”をまとっているように見える事だ……
「フン!知るかそんなこと!私は認めんぞ」
「あらあら、団長ったらそんなに怒ることないじゃないの」
「セレナ、仕事に私情は禁物よ!私たちを早く案内しなさい!」
「ハッ、失礼しました、ただちにご案内致します」
「ワタ殿!こちらへ」
セレナはメリアに促されると、さっと表情を変え事務所を出て城までの誘導を始める。
城まで通っているここの道は兵士達が連絡用に使用している地下通路で、城壁、城門等の重要軍事施設に通じている、壁と天井にはランプがつけられており意外と明るい。
今案内してくれている三人は、王国近衛師団所属の兵士でセレナが師団長を務めており、側にいる二人ともに近衛師団所属の連隊長であるらしい、なぜこの三人が来たのかと言うと、この三人はメリア直属の部下でもあるからだ。
「メリアさんちょっと質問しても良いですか?」
「いいわいくらでもして!それと、さん付けしなくていいから」
「そ、そうか、じゃ遠慮なく言わせてもらうけど、そもそもなんで召喚したの?」
「それはね、ベルも言っていたと思うけどこの国は今強大な国“デスニア帝国”によって侵略されそうなの、そこでね、貴方のいた世界をたまたま“鏡”で見ていたの、それこそそっちの世界も危機的状況なのかもしれないけれど、この国にはもう頼れるものがいないの、それでなんで貴方を選んだかっていうのは、貴方があの世界でどんな人にも好かれるようなそれでいて頼れるところも有って、自分の意思を強く持っていたように見えたからよ、そんな性格の貴方をこの国の指揮官として招き入れたかったの、ある程度の知識もあるようだしね、あと、もう気付いたとは思うけど貴方には私が授けた魔法、貴方の世界で言う“チート”があると思うの、それも悪用しない人だとも思ってのことだわ、実際エルベを救ってくれたみたいだし」
「結構呼び出してもらった理由が重いね……正直それに応えられるか分からないよ、しかも今の今まで魔法が使えるなんて知らなかったよ……」
「きっとあなたなら何とかしてくれると思うわ、それと言い忘れていたけど……今日から私は貴方の奥様よ!」
「何ぃ!?」
唐突な物言いで理解できない、しかも嫁って!?
「と言うことでよろしくね!ア・ナ・タ!ウフフッ」
「ちょっと、待ってメリアさん!いくらなんでも唐突過ぎるでしょ!」
「いいじゃない!そして今から国王様になるのよ!どう?素晴らしいでしょ?」
「うん、悪くない、でもよくわからないなー」
理解が追い付かない俺は、とりあえず棒読みでメリアに返事をしていた。
「ちょっと!!なんで棒読みなのよ!そんなに気に入らないの、こんな美女がいるって言うのに……仕方ないわね、そんなあなたに妹たち二人も嫁がせてあげる」
俺がメリアの要求?に渋っているとどんどんメリアはエスカレートしていく。
「とりあえず一旦落ち着こうか、確かに俺は前世ではこんなような事を夢に見てたいし考えていたけど、やっぱり一気に責任が増え過ぎかな……もちろんメリアは綺麗だし嫁にもらっても嬉しいし正直興奮してる。けどね、本当にこんな俺でいいのか?」
「大丈夫、君にはしっかりと付いてきてくれるし、第一私が付いているでしょう?安心して、しかもあなたのことは私は心から“好き”って言える自信もあるもの」
「国王陛下、女王陛下後宮へと到着いたしました」
話をしているうちに目的地にたどり着く、そこには宝石がちりばめられ、まるで首飾りのように美しい扉があった、それをサクラとミントが開けセレナは入り口の脇に立ちお辞儀をしてくる。
「着いたわよ、ここが今から“私達”夫婦の部屋よ」
「“私達”って?」
中に入るとそこには複数人の美女たちがいた
「「「「おかえりなさいませ!御主人様!!」」」」
(目の前にあのメイドが!!やばい興奮しますね、主に下で……ハッ!いかんいかん)
「これからお世話してくれるメイドたちよ、あなたの好みに合わせて選んでみたわ、私はもちろんだけどこの子たちにいつでも“お世話”してね?」
「ハイ!カシコマリマシタ!」
「フフッ、反応が可愛いわね、一応紹介しておくけど右からメイド長のレナ、それからイオ、セレーヌ、ミサトよ……ワタ!大丈夫? 気絶しちゃったみたいね、まあいいわ、あなた達寝室に運んで差し上げなさい!」
「「「「御意」」」」
長旅と初の戦闘に疲れていたのかそのまま意識を失うようにして倒れてしまった、その前にあんな責任負わされたら誰でもクラっと来る。
「おやすみ、ワタ、明日からがんばってもらわないとね」
最後に俺の耳元で何かをささやいたが、その時はすでに意識は闇の中に――




