361.中央諸国連合2
まずカイルから語られたのはコンダート王国に向かってきているイスフェシア皇国の女皇と勇者のことについてだった。
勇者であるオゼットはこちら側が派遣した艦隊によって無事にベルン港まで送り届けられ、近くにあるベルン駅から東北新幹線でヴィアラと共に向かって来ているようだ。ちなみに乗っているのはグランクラスで、長旅で疲れたからだを休めながらゆったりと来てほしかったので、俺が予めそうするように言ってあったからだ。
一方イスフェシアの女皇であるマリーと呼ばれる人物は、従者と共に既にどうやったのかは不明だが、帝国経由で国内に入ってきており。ガレア駅から上北新幹線に乗ってこちらに向かったことが確認されているようだ。
この二人は到着後、すぐには俺達とは会談せず一旦長旅の疲れを癒してもらうため、王城の一角にある来賓用客間に泊まってもらい、温泉に入ってゆっくりしてもらう事になっている。
予定では明日の昼過ぎには会談する事になっている。
「いよいよ、元居た世界から“転移”してきた人達と会えるわけか!これは楽しみだ!」
「それは何よりです。では次ですが……」
次に旧中央諸国連合から来た使者の話だった。
最近コンダート王国の勢いが増して来た事により帝国の力が徐々に弱まり始めたと感じた、帝国中央部に位置する旧中央諸国連合の首脳たちは、帝国から独立すべきだという考えを示した。
しかし、その独立をするためには、自分たちの領域から帝国正規軍を追い出さなければならない。しかもその領域内帝国正規軍の兵力は歩兵25万と竜騎兵450騎、飛空艇大小合わせて300隻とかなりの数が駐留している。
対する旧中央諸国連合は領域内にいる貴族や王族直属の兵と民兵を合わせて5万を少し超えるほどしかいない。
それに加えて、これまで物資や人的資源等帝国によって搾取され続けて来たこともあり、これ以上兵力を増やすことも兵器を生産することも今では独力では不可能な状況に陥っている。
そこで白羽の矢が立ったのが、今この大陸で最も勢いのあるコンダート王国だ。
彼等の帝国軍をいとも簡単に退けるどころか、文字通り消し去る事もできるような軍をもっているという情報を聞いていたのでなおさらだ。
一応一番近いエンペリア王国にも助力を求めようという案もあったが、エンペリア王国自体もコンダート王国に支援されているという事もあり、却下されている。
これまでコンダート王国に何とか助力を求めようと、何度も行動を起こしていたようだが、そのたびに帝国軍に事前に察知されてしまい何度も頓挫していたという。
一時はあきらめようとしたときもあったそうだが、転機は突然訪れた。
それは王国中央情報局員がとある任務の為に旧中央諸国連合の一番大きな勢力を誇るイミテシア王国国内に訪れた時の事。
彼は丁度帝国国内で王国の協力者を探していて、その情報をキャッチしたイミテシア国王がそんな彼を直接呼び出したのだ。そこで彼からイミテシア国王はコンダート王国の強さや“銃”というもの等の話を聞き、帝国を上回る力を持っていると確信したので、その場で協力することを快諾していた。
そして今回、その情報局員の彼の働きにより、旧中央諸国連合イミテシア王国から使者を帝国にばれることなく秘密裏に王国に送ることが出来たのだ。
「その使者とは会えないのか?」
実際に話してみたいと感じた俺は、カイルに食い気味に聞いていた。
「ええ、むしろその使者様自身、陛下にお会いしたいそうですよ。なんでも具体的な話をしたいということで」
「そうか!どんな人なんだ?」
「イミテシア王国第一王女だそうです、それは、それは綺麗なお方ですよ」
「そうか、それは楽しみだ。話しの腰を折ってすまん、続けてくれ」
「はい、では次の話です」




