358.カレーモンスター!
俺たちはテーシャの後についていき、そのお店へと向かった。
昼の時間という事もあってどこも行列が出来ていた。
店の前を通ると、いい匂いが漂ってきており、食欲がそそられる。
「つきました!」
テーシャはものすごい笑顔とテンションだ。
見るとそこはカレー屋だった。
「私最近ここのカレーが好きでして!」
テーシャは目をキラキラとさせながらこちらを見てくる。
その様子から、よっぽどカレーが好きなんだろうという事がわかる。
これでは「おススメしたい」というより「行きたかった」の方が正しいぐらいだ。
(何だろう……、すごいデジャブを感じる……)
俺はその様子を見て、ある人物が脳裏に浮かんでいた。
「お、お前もか」
「はぁ、貴女もなのね……」
俺とメリアはそろってため息をつく。
「ああ、やっぱりメリアもそう思うよね」
「残念ながらね」
俺はそうは思いつつも、一応それでもどんなところか気になったので店の方向を見ていると、かなり長い行列が出来ていた。
その行列の長さは他にある飲食店より長いことから、かなりの人気が伺える。
(もしかしたら、普通に人気だから行きたかっただけなのかもしれない。うん、そう思っておこう)
俺は嫌な予感がしたので店内をちらりと覗いた。
すると俺の嫌な予感は的中していた。
そこにはなんと“奴”、否、クッキーモンスターならぬ“カレーモンスター”(キーレ・ミサ中将)がいたのだった。
「メリア、ちょっと」
「ん?何々?……はぁ、あなたが原因だったのね」
メリアはその光景を見て、さっきより大きなため息をついていた。
行列が出来ていたのは人気のカレー屋というのもあると思うが、それに拍車をかけているのは彼女だろう。
みれば彼女のテーブルは数え切れないほどの空いた皿と運ばれてきたカレーで占拠されていた。
(えっ?ここって寿司屋だっけ?)
皿が縦に積まれているその光景を見て寿司屋と勘違いしてしまいそうだ。
彼女がたくさん頼みまくるせいで、他のお客様のところに行きわたるのが遅れているようだ。
みればかなり待たされているのか、腕を組みイライラしている人もいた。
お陰で行列はなかなか前に進まず、さらに厨房を見ると皿の山が出来ていた。
お店にとっては嬉しい悲鳴といいたいところだが、これではただの地獄だ。
最終的にはお店の仕込んでいたカレールーや炊いたご飯が尽きてしまったようで、店員はせっかく並んでいたお客さんに申し訳なさそうに閉店することを伝えていた。
並んでいたお客様が全員帰られたのを見届けたあと、その店員は心底呆れたような表情をしていた。
「テーシャここに入るのは無理そうだな……」
「そのですね……、はぁ、今日も入れなかった……」
テーシャはものすごく残念そうにしていた。
よっぽど入りたかったのだろう。
その様子を見たメリアはとある人物を呼びだした。
「もしもし、リディア?忙しいところ申し訳ないんだけど、貴女のところのとある将校がアルダート駅の駅ビルのカレー屋で暴食しているから何とかしてちょうだい……。うん、うん、悪いわね。」
メリアは海軍総司令官であるリディアを直接呼び出していた。
彼女の驚いた声と繰り返し謝る声が電話越しにも聞こえていた。
この時メリアが海軍省で一番立場の上のヴィアラを呼ばなかったのは、今彼女は例の勇者を迎えにベルンに行っているからだ。
このカレー屋は結局入れなくなってしまったので、仕方なく俺達は隣にあったオムライス屋に入った。
ここもテーシャおススメの店なのだという。
彼女曰く「隣のカレー屋が入れないときはこちらに入ることにしているんです」らしい。
つまり“カレーモンスター”も定期的にここにきているという事か。
これは大事件というより普通にお店の人がかわいそうだ。
売上が少々下がるが“奴”には来させないようにしよう。
早速俺達はその店に入ることにした。
「い、いらっしゃいませ!?」
お店に入ると、俺達のことを席に案内しようとして来てくれた店員さんは声を上ずらせ目を見開いていた。
そして、その店員さんは目の前で起こっている事が理解する事が精一杯になり固まってしまう。
「あ、あの~。6名なんですけど、席空いてます?」
「あっ、あっ」
「大丈夫ですか?」
余りの反応に俺は困惑してしまう。
(まぁ、王族がふらりとくるようなところじゃないし。当然といえば当然だよね……)
その後、何とか正気を取り戻した店員さんに案内され、テーブル席に着く。
店内の壁や天井は木材が使用されており、開店からそこまで日数もたっていないこともあって、木の匂いが漂っている。
照明もそれに合わせて明るすぎないように設定されており、まるで晴れた森の中にいるようだ。
席に着いた俺は店先の看板にあったおススメメニューのオムライスを注文していた、それにつられて他のみんなもオムライスを注文していた。
俺達が注文するのと同じタイミングで何か毒物を入れていないか監視する為、厨房に鉄道警備隊がずかずかと入っていった。
飲食店店員からしたら、いい迷惑だが、あちらからすれば何か難癖をつけられて後で大きな問題になったり、何か疑われたりするよりましだろう。
十分ぐらいたった頃、お待ちかねのオムライスが出て来た。
待ちきれない俺は、スプーンをとると、そのふんわりとしたオムライスを口に運ぶ。
「んんっ!うまい!」
「あら、ホント!おいしいわね!」
「ですよね!この店のオムライス本当においしいんです!」
一方千代姫たち出雲組は、最初この黄色い物なのが何なのかといったような目でオムライス凝視していたが、俺達がおいしそうに食べているのを見て、恐る恐る口に運ぶ。
「姉上!これは美味です!」
「あら!本当!琴音はどうかしら?って、いうまでもないようね」
琴音は一口食べたあと、このオムライスがおいしいものだと分かり、さらに緊張して朝からほとんど食べていなかったようだったので、今彼女はものすごい勢いでオムライスを食べていた。
その勢いのあまり口の周りにはケチャップが大量についていた。
「琴音、口の周りに食べ物を付けるとは見っともありませんわよ?」
「こ、これは失敬。しかし、こんなに美味なもの初めてで……、モグモグ」
琴音は余程気に入ったのか、尻尾をブンブン振り回しながらオムライスを食べ続ける。
そして、オムライスを食べ終わり会計をすました、俺達は次の目的地へと向かうことにした。




