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356.駅ナカで

 

 テーシャの話を聞きながら、駅ビルのエレベーターで飲食店が集まる3階まで上がっていく。

 13階には高級レストランがあるのでおもてなしするには、そちらの方が良いのだが。

 今回は庶民的なものの方が喜ばれるだろうし、それらを知っていてほしいという事もあって、ここにきている。



 聞けば、この駅ビルは「パルティナス」という名前が付けられており、この名前には天高くそびえるものという意味が込められているという。

 ビルの高さは220mもありその名前が付けられたのもうなずける。

 この高さはこの国の人工的な建物の中では一番高い。



 今乗っているエレベーターは床と天井以外のほとんどにガラスが使われており、まるで空中浮遊をしているかのようだ。

 ただ、高所恐怖症の人にとっては恐ろしい以外の何物でもないが。


 飲食フロアに着くと、そこには開業当初はなかった“駅ナカ飲み屋街”というのもできており、そちらも地元の人のみならず観光客にも好評で、夜遅くにビルが閉まるまで人は絶えないそうだ。

 さらにその奥には様々な飲食店が軒を連ねている。

 フロアガイドを見ると、その中に以前メリアと初デートに行ったところと同じサンドイッチ屋もあった。



 このビルの成功によって元からあったアルダート城下町商店街が閑散としないかという心配があったのだが、周辺の宅地開発による人口増加や国内外からの観光客の激増によってむしろ賑わっているというので、それは杞憂に終わった。


 同じようにガンダルシア駅やセレンデンス駅、ハミルトン駅といった主要駅も駅ビルや駅周辺の土地開発を進めており、こちらも地元に合わせた開発計画になっているので、周辺だけでなく少し離れたところにも人が集まり住宅需要が高まっているそうだ。


 ただ、その開発した分自然の破壊による生態系への影響や景観が損なわれるなどといった、デメリットが浮き彫りになり、それに対する批判が上がり始めているという事もまた事実である。

 これらについては、町だけでなく国全体を発展させていくうえで避けては通れない問題だが、それを見て見ぬふりをせず何か対策を立てなければならないだろう。




 フロアガイドをよく見ればまだ空白の部分がちらほらとある。


「テーシャ。この空白は?」

「そこはまだテナントが入っていないところでして、まだ入る店自体決まっていないんです」


 詳しく聞くと、ここに入っている飲食店以外に、この駅ビルに入れるほど金銭的に余裕のある周辺地域の飲食店がもうすでにないらしい。

 それに困ったテーシャやアネッサ達は新たに飲食サービス事業を王国鉄道として展開しようかという案に至った。

 しかし、なかなかいい案が出ず、結局今のままという形に至ってしまったという。


「我々も一生懸命案を出したのですが……」


 テーシャはそれではいけないと思い、商業ギルドや知り合いの軍人にも聞いたようだ。

 その中には検討段階まで行った案もあったらしいが、結局駅ビルの雰囲気に合わないなどの理由から没になったらしい。

 かなり彼女が苦悩した事が伺える。


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