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354.お迎え

 

 こちらに向かってくる集団の先頭には見覚えのある3人の女性がいた。

 出雲国の遠城帝の娘である千代姫と美鈴姫、さらにもう一人“元”海軍奉行の館浜琴音だ。


 そう、この3人こそ今日俺達が待っていた人物だ。

 千代姫や美鈴姫は赤い着物を、琴音は藍色の着物姿で3人とも非常に美しい。


 彼女達の後ろには、出雲国の各軍関係者が様々な兵器の視察や実際に士官学校に入学体験する為訪れていたのだ。


 軍関係者たちはそれぞれ各集合場所へ向かうため、俺達に敬礼をすると、王国側の案内人に導かれるまま電車へと乗り込む為ホームへと向かっていった。

 聞けば、次の便で出雲国各軍の士官候補生も到着するのだという。

 この積極的に技術を学び入れようとする出雲国の姿勢を見ていて、やはり元居た世界の日本のようだとつくづく思うのであった。



「千代姫それから美鈴姫、琴音、ようこそコンダート王国へ!みんなの顔がまた見れて嬉しいよ!」


 俺は三人に対して両手を横に大きく広げ歓迎の意思を示す。

 その、広げた手の中に大胆にも琴音は我先にと言わんばかりに突っ込んでいた。


「おっと」


 俺は予想していなかった、琴音の行動と衝撃に少々後ろによろけるが、何とか受け止め抱きしめてあげた。

 すると琴音は、先ほどの自分の行動が少々恥ずかしいと思ったのか、俺の胸に顔をうずめる。

 しかし、反面九つの尻尾は全て喜びを表すように大きく振っていた。


「お久しゅうございます、国王陛下……、いえ……、『あなた』お会いしとうございました」

「俺もだよ……、琴音。それにしても、以前あった時と違って随分と雰囲気が変わったね?」

「そ、そうでしょうか?」


 確かに、以前強襲揚陸艦“アメリカ”の艦上で初対面したときの堂々としていた時と比べ、少々しおらしく感じる。

 というよりもはや別人のようだ。

 恋が人を変えるというが、まさにこう言う事なのだろうか。


 俺は、そんな好意を持ってくれている琴音が愛おしく感じ、自然と彼女の頭と耳を撫でていた。

 撫でてあげると、耳がピコピコ動き、尻尾は千切れそうなほど激しく振っていた。

 言葉には出さないが、よっぽどうれしいのだろう。


 (ケモ耳モフモフ最高!いかん、これはずっと撫でていたくなる……)


 俺は彼女のふわふわした耳と頭をなでなでしすぎて、今の状況がどうでもよくなって来ていた。

 いっそ、このまま寝たいぐらいだ。


「んんっ!琴音?私たちを差し置いて抜け駆けとはいい度胸ですね?」


 ここに来てからずっと琴音ばかりを相手していたので、それを良く思わない千代姫が嫉妬半分、怒り半分でこちらに詰め寄って来た。


「ワタは悪くないけど、そろそろ変わってあげたら?」


 メリアはこの状況になれているので「またそういう事して~」という軽い感じで俺に助言をする。


「も、申し訳ございませぬ。千代姫様。とんだ出過ぎた真似を……」


 千代姫のその言葉でようやく自分の行いがよくないことに気付いた琴音は、俺から名残惜しそうに離れ、耳を後ろに折りたたみ尻尾を下げ、反省の態度を示す。

 それでも機嫌が治らない千代姫様子をみて、俺はもう一度腕を横に大きく開き、千代姫を呼ぶ。


「千代姫、おいで」

「っ!はい!」


 俺のその行動に一瞬驚いた顔をするが、すぐに嬉しそうな顔に変えこちらに歩み寄ってくる。

 そのまま俺は、琴音と同じように千代姫を抱きしめてあげた。


「……、私を後回しにされると、後で拗ねてしまいます」

「ごめんよ」


 残る美鈴姫は、こちらの様子を伺いながら、エリサやアリサに挨拶していた。

 彼女は、今俺の方に行くことが叶わないと思っているのだろうか、あまりこちらに積極的に来ようとしなかった。




 無事三人を出迎えた俺達は、アルダート城に来た時と同じようにV-22 に乗ってはいかず、最近開通したばかりのアルダード北空港線に乗って帰る事にした。

 帰りもV-22に乗って帰ればすぐだし安全なのだが、この国に初めて降り立った琴音と美鈴姫に実際に電車に乗ってもらい、電車の良さを知ってもらうため、わざわざこの行程にした。


 乗る電車は安全策としてあらかじめ貸し切り状態にして、さらにその車両にはアルダート駅警備師団所属の隊員たちが完全武装で警備してくれている。


 電車を見た琴音は「見慣れない金属製の馬車」等といいながら、興味深そうに観察していた。


 ピコンッ!ピコンッ!


「な!何事!」


 ドアが自動で開閉したことに驚いた琴音は、素っ頓狂な声を出しながら後ろに飛び上がってしまう。


「キャッ!」


 丁度その後ろにいたエリサが、その飛び上がって来た琴音の頭が顔面を直撃し、そのまま後ろに倒れる。

 しかし、運のいいことに少し後ろに離れた位置に俺が立っていたので、そのまま彼女を受け止めることが出来た。


「大丈夫かい?二人とも?」

「え、ええ」


 エリサは何ともないといった表情をしているが、琴音に至っては驚きのあまり痛さも忘れその場でフリーズしていた。

 よく見れば美鈴姫は恐怖を感じたのか、千代姫の後ろに身を隠し、まるで子猫のように身を震わせていた。


 これまで、出雲でもこちら側の現代兵器や文明の利器に見て触れて来ているはずなので多少は免疫があるかと思ったが、前触れもなく急に大き目の音がなってさらに勝手にドアが開けば驚くのも無理はないだろう。


「おーい、琴音?」

「……あ、あ」


 俺は琴音に呼びかけるが、完全に思考停止状態に陥っていた彼女は、まるでロボットがバグを起こしたかのような反応しか返ってこなかった。


「琴音!美鈴!何をそんなに驚いているのかしら?この様な事で驚いていてはこの国で生きてはいけませんよ!それと、公衆の面前でみっともない」


 千代姫はそんな二人に厳しい言葉をかけていた。

 しかし、それは怒りからくるものではなく、早く慣れてほしいという気持ちがあってのことだろう。



 そんなハプニングはあったが、何とか気を取り直した二人は俺達と共に電車に乗り込んだ。







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