31.検問所にて
この国の首都アルダートへは最初に召喚された森からは1日かかる計算だったがエルベ村からは半日かからないそうだ。
ベルによると、全ての種族が差別なく住んでいてなおかつ税率もかなり低く、アルダート都知事の選挙権もこの都市の住民が持っていて、かなり民主的な都市である。もちろん他の都市にも同じように選挙権も市民権もあるが、財政基盤があまり強くないので若干税は高めであるようだ。
さらに、アルダートにはベルやシエルが通っていた王立士官学校をはじめ、王立魔術学校、王立兵学校、王立女学校などの王立学校の他、国立、都立と幅広い教育機関が存在し教育水準も非常に高い。また地球ほどではないが魔術による医療技術のようなものがあるようだ。
アルダート城に近付くにつれて農場や住宅街、商店街などが増え、大通りには現代のように車こそないが馬車などが行きかい、今が戦争中だと思えないぐらい活気にあふれている。
城門に近付くと、そこには入城する者や城から出る者でごった返している、俺達は混雑している一般の入り口からは入らないで、兵士や貴族、外交官などが入城する専用の門から入った。
すると駅の改札のようになっており、そこで一人一人身分証を提出していく。
ベル、シルヴィア、キューレ、エレザ、ミレイユ達はすんなりと通り抜けられたが、ここで俺の番になった。
「身分証明書を提出して頂けますか?」
「あ~えっと……」
当然身分証等持っていない俺は、どうすればいいかわからず挙動不審になってしまう。
その様子に係員は険しい表情になる。
「ちょっと君、どうしたんだ早く出したまえ」
「すみません、奥の場所に引っかかってて取れなくて」
(どうすんだよ!身分証提出とか聞いてないし! 肝心のベル達はそのままいっちゃったし……)
ベルやエレザが俺が来ることが遅いと思ってきてくれることを願い、ポケットに身分証が引っかかったように見せかけ時間稼ぎをしていた。
そんな事をしているうちに係員の顔はどんどん険しくなっていき、しまいには腕を組み貧乏ゆすりをし始める。
「その者の身分は、わたくしが保証しますわ!」
すると後ろから顔を頭巾で隠し、さらには大きな外套を着込んだ女性らしき人物に助け船を出された。
「誰だ貴様は!もういい!貴様等二人とも事務所へ来い!」
「え!ちょ、なんで~」
ただでさえ怪しい行動をとる男(俺)のところに、顔が一切見えない怪しい女性が来たところで、係員の男の沸点は限界に達し、声を荒らげる。
「いいわ、連れて行きなさい」
「お姉さんか何だか知らんけど、どういうこと?」
「うるさい、さっさと入らんか!」
そのまま、警備していた兵士(怖いお兄さん風の)にお姉さん?と一緒に事務所(意味深)へと連行される。
「さあ、どう言うことか話してもらおうか」
「そのですね……」
周りに怖いお兄さん方が固めており、俺はよく刑事物である机に座らされ尋問?のようなことをされようとしている。こんな状況下でも先ほどの女性は動じていないようで、むしろ自信があるとでも言うような雰囲気だ。
俺が質問に対して言い淀んでいると、女性はおもむろに頭巾を外したかと思うと外套も脱ぎ始めた。
するとそこにはどんな人が見ても“お姫様”と思うような格好をした女性が姿を現す。




