352.後宮での朝2
着替え終えた俺は、護身用の銃を選ぶためにガンロッカーを開く。
ガンロッカーの大きさは奥行き5m、幅4m、高さ3.5mとかなり大きい。
そこにはハンドガンはもちろんのことアンチマテリアルライフルやアサルトライフル、サブマシンガン等様々なものが保管されていた。
ここまで行くとガンロッカーという言葉より武器庫といった方がいいだろう。
ただ、開ける前はロッカーのような見た目をしているのでガンロッカーと今後も呼ぶが。
「迎えに行かないでここで1日中過ごしていたい……」
元居た世界でサバゲ好きだった俺にとって、こういった銃が並んだ場所にいるだけで数時間過ごせるというのに、ここでは自分専用の触れていじり放題の実銃があるとなれば一日、いや、数日はここだけで過ごせる自信がある。
そして、30分近く時間をかけてようやく選んだSIG320を腰のホルスターに収める。
身支度が終わると俺は朝食が用意されている後宮のテラス席へと急ぎ足で向かった。
そこにはメリアとエリサ、アリサ3姉妹が白いドレスに身を包み、コーヒーを飲みながら待つ姿があった。
「みんなお待たせ!」
「あら、随分とかかったわね?ワタの好きなおいしいコーヒーが冷めちゃうわよ?」
「いや、持ってくる護身用の銃を決めていたら、時間かかっちゃって。アハハッ」
俺が時間をかけて来た理由がそんなものかとメリアは呆れたような表情をするが、すぐにそれは笑顔へと変っていた。
「もう、相変わらずですね」
今朝のアリサもそうだったが、エリサ
それにしても4人だけがこうして同じ場所にそろって食事するのはかなり久々だ。
そんなテラス席からは、急速に発展していく城下町が見え、さらにその奥の方にはうっすらとキーレの町が見えていた。
そんな見晴らしのいい場所で、4人は優雅に朝食をとり終えると、出雲からやってくる3人を迎えに行くため城を出た。
本当であればエレオノーラを連れて行かなければならないが、それはメリアによって止められていた。
彼女と俺が離れてしまうと、彼女が死んでしまうのだが、メリア曰く「奴隷契約にあった主人の近くにいないと死んでしまう部分は改変しておいたから大丈夫よ!だからたとえ離れ離れになっても大丈夫だから」なのだという。
これから向かうのは最近出来たアルダート北空港という場所で、今は軍の管理下にあるが、今後この空港は完全に民間が主に国内線用の空港として運用されることが決定しているところだ。
近くにこことは別にローゼリア国際空港(建設中)という空港もあり、こちらは名前の通り国際線用(一部国内線)として運用されることになっている。
これまで俺を狙ったテロまがいの行為が多いことや俺の“不幸なことに巻き込まれやすい体質”というのもあり、空港までは最近近衛軍団に新たに創設された近衛航空師団所属のV-22オスプレイに乗っていくことになった。さらにその周辺には空軍の戦闘機が360°取り囲み、さらにはその航路上の地上すべてに兵を配置した。
かなり異常で過剰な警備だが、これまでのことがあった以上は俺も「やめろ」とは言えない。
戦闘機に全方位囲まれた状態での移動は、安心するどころかむしろ恐怖すら感じる
そんなこんなで、アルダート北空港に到着すると、ここでも近衛第四師団とミスティア隊による厳重な警備の元、もう間もなく到着する千代姫たちが乗る飛行機を空港ビル内のラウンジで待つことにした。




