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350.宴会

 

 そんな珍事もあったが、俺は料理をプレートに取り分けると席に戻った。

 俺のプレートには寿司がぎゅうぎゅうに詰め込まれていた。

 それを見たメリアは「ミサのこと言えないじゃない」と笑われた。


「これは違うよ!俺はミサと違って毎回寿司じゃないから」

「どうかしら?」

「いいの!」


 メリアは俺の言い分に疑いをかけていたが、対してメリアのプレートにはケーキやプリン等、甘い物しかのっていなかった。

 結局同じようなことを考えているんだと気づいた俺とメリアは、顔を見合わせ笑った。



「そういえば、シルヴィア」

「なんでしょう?」

「これまで俺達がいない間何してたんだ?」


 ふと俺はシルヴィアがこれまで俺達が出雲国に行っていた間、何をしてきたのか聞いていた。

 すると、シルヴィアはこれまで強くなるためにダンジョンに潜っていたという。

 ダンジョンに潜る時に、サクラやミント、その部下達も訓練と称し連れて行っていたようだ。


 このときにシルヴィアは様々な銃や他の武器を持っていき、モンスターに対してどの武器が有効なのかという実験も行っていたようだ。

 結果として、岩や硬い甲羅等で覆われたモンスターには12.7×99㎜弾以上であれば有効で、それ以外のモンスターは5.56×45㎜であれば十分だという。


 さらにダンジョンという狭い環境を利用して、モンスターを駆逐した階層やエリアを他の陸軍や法執行機関等の近接戦闘訓練用に再利用するなど、ダンジョンの有効活用を進めたようだ。

 これを聞いた軍上層部は、ダンジョンを新兵の初期戦闘訓練の場としようと動き始めている。

 ただ、その弊害として、ダンジョンに潜ってモンスター討伐や宝物を探すことを生業としている冒険者の仕事を奪う事になるので、冒険者ギルドはその動きに猛反発をしている。


 その反発の裏には冒険者ギルドの焦りのようなものがある。

 それは、最近冒険者の多くが軍や法執行機関、準軍組織へ流出しており。さらにそこに追い打ちをかけるように軍によるモンスター討伐によってモンスター自体の数が大きく減らしていることだ。


 モンスターが減ることは一般市民にとっては良いことしかないのだが、冒険者ギルドにとっては稼ぎだけではなく構成員もいなくなってしまい、存続が危ぶまれる。

 またさらに、ギルドマスターであるエレザも最近では海兵隊の隊員育成に力を入れ始めてしまったこともあり、もはや冒険者ギルドは形骸化してきている。


 こうなることを予期して、セレナはシルヴィアやサクラ、ミントにダンジョンに潜って冒険者ギルドを刺激しないようにという警告を発していたが、シルヴィア達が持ち帰った実験データを見てそれ以上は何も言わなくなったそうだ。




 話を聞いていて、これ以外でもそうだが、銃をはじめとする現代兵器という文明の利器が異世界に与える影響は計り知れない物だという事を俺は思い知らされていた。

 いい影響を与える反面、その影ではこれまでの伝統的なことや長く続けて来た生活を壊していると思うと心が痛む。

 良かれと思ってやってきたのだからなおさらだ。

 ここまで進めた以上中途半端で終わらせず、きちんとした形に落ち着かせようと俺は心に誓うのだった。




 ある程度腹が満たされたころに、ワインや日本酒が運ばれて来た。

 それを見たみんなは「待ってました」と言わんばかりにお酒が用意された場所に向かう。


 用意されたお酒の中には、出雲でもらってきた日本酒があったので、俺はそれを運んできたメイドに注いでもらい、頼んでおいたタコの刺身を肴に飲むことにした。

 やはり、日本酒には刺身があう。さらに塩辛があれば最高なのだが……。




 お酒が届いてからは宴会のようになり、全員席から立って談笑していた。

 俺が席を立ちシルヴィアから離れると、それを好機ととらえたエレオノーラはぴったりとくっついてきた。

 その様子にシルヴィアは一瞬眉をひそめたが、さっきのこともあったので、大人しくお酒を取りに行った。



 お酒が入ったヴィアラとエレシアは、最近では恒例になって来た“喧嘩”が始まっていた。

 彼女達にも俺がエレオノーラとシルヴィアに言っていたことを再度言い聞かせようとしたが、メリアに止められた。

 メリア曰く「あれは姉妹のじゃれあいのようなものだから大丈夫だ」と、さらに続けて「普段はあの二人は仲がいいから」といっていたのですんなりとそれを受け入れた。要は喧嘩するほど仲がいいという事だろう。



 ふと窓際に視線を向けると、そこには日本酒を片手に一人たたずむレナの姿があった。

 彼女は以前俺が用意した着物を着ており、その美しい着物姿に俺は目を奪われていた。

 そのまま彼女に近寄ると、温泉の匂いがふわりと香って来た。


「レナは一人?」

「陛下?私に何か?」


 レナは俺の声に反応して、レナの真横になっていた耳はピコンとまっすぐになり、尻尾も大きく揺れ動く。

 その様子を微笑ましく思いながら、さらに話しかける。


「いいや、何もないよ?新幹線に乗った時もそうだったね?」

「あの時は違いましたが、元々こういう場所は苦手でして……」

「そっか。でも、実を言うと俺も苦手なんだ」

「え!陛下も!」

「しっ!これは誰にも言っちゃだめだよ?」

「わ、わかりました」


 それから二人はまた元居た世界での思い出話で盛り上がり、気付けば大広間にはレナとエレオノーラ以外誰もいなくなっていた。

 どうやら、他のみんなは温泉へ行ったらしい。


 その様子を見た俺はレナとエレオノーラと一緒に寝室に向かうのであった。


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