348.みんなと一緒に
「ワタ!ご飯の用意がもう出来てるぞ!いつまで入ってるんだ?」
入口からエレザの呼び声がする。
俺はもう少しゆっくり入っていたかったが、キューレが「ご飯早く食べ行こ!」と言ってきたこともあり、少々名残惜しさを感じながらも温泉から出る。
すぐに着替えを済ませ、夕食の用意されている後宮の大広間へと向かった。
大広間の大きな長机には、既にエレシアやアリサ達が座って待っていた。
しかし、俺が座る椅子の近くでは、エレオノーラとシルヴィアが俺の右隣の席をめぐって言い争いをしていた。
もちろん、もう片方はメリアだ。
「私がワタ殿の隣に座るのがふさわしい!急に現れた傲慢な白エルフには譲るものか!」
「やはりここでもその話を持ち出しますか卑怯者の黒エルフ!ご主人様の奴隷であるこの私が隣にいるのが自然でしょう?」
「奴隷?フフッ、とうとう白エルフも落ちぶれましたね!」
「貴様こそ、ご主人様の元に匿ってもらっているのでしょう?あまり変わらないのでは?」
「何を!」
元居た世界でのファンタジーでもよくあるエルフとダークエルフの不仲説はどうやら、この世界でも当てはまるようだ。
その後もエスカレーションしていく二人を皆は止めるどころか、どうにもならないから放っておいているという諦めた表情をしている。
俺はこの様子を不思議に思い、隣にいたエレザにこっそり聞くと「エルフとダークエルフが揉めるのはいつものことだ、あれを止めようとするとかなり面倒だからな。結局放っておくのが一番」と返って来た。
さらにコンダート王国のことわざのようなもので「エルフとダークエルフを近づけるな」というのがあるのだという。コンダート王国国内でも両者はお互いに自ら近寄らないようにしているぐらいなので、よっぽどなのだろう。
このことわざには単に、戦闘能力が高いエルフやダークエルフに人間や他の亜人族が勝てないから近寄るなという意味と、両者は寿命が長いので人間や亜人族が死んでも続けるから間に入るなという意味がある。
普段こういう時にはベルが誰彼構わず争いに介入しているのだが、今は大人しくセレアの隣に座っている。
恐らく、最初は介入しようとしたんだろうが、セレアの一喝を喰らったのだろう。
とはいえ、このままでは食事をすることもままならない。
さらに、みんな俺にどうにかしてくれと言わんばかりの視線を送ってくる。
その視線には「あなたの責任ですよね?」という意味も含まれているのだろう。
俺は、その視線と止まらない二人の口論を止める為、強引にシルヴィアの腰を引っ張り席に座らせた。
エレオノーラには端の空いている席に座るように、その方向を手で差し促した。
「キャッ!ワタ殿!な、何をなさるのです?」
「いいから、座って。長い間話してなかったからな、色々聞きたいしさ」
「そ、それなら仕方がないですね!白エルフはそこらへんで立っていればよいのです!」




