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330.久々の王国2


 数分後。


 当初二人はまだまともな“議論”していたが、徐々にそれはただの罵り合いに変わっていった。

 流石の俺もそれには呆れ、とうとう我慢ができず二人に喝を入れる。



「いい加減喧嘩するなら二人とも後宮に行きなさい!!」


「は、はい」


「も、申し訳ございません」


 俺の一喝にようやく落ち着きを取り戻した二人は、予想外の攻撃にシュンとなりながらも俺の指示に従ってトボトボと後宮へと向かっていった。

 そんな後宮に向かう彼女達を見届けると、俺は留守中この国を守ってくれていた首相のユリアがいる首相執務室へと向かった。


 トントン


「……、誰よこんな忙しい時に!後にしてちょうだい!」


 執務室に入ろうとドアをノックすると、部屋の中からほぼ叫び声のようなユリアの声が聞こえて来た。

 ユリアはどうやら俺が居ない間に相当な書類が溜まり、そのせいでかなり気が立っているご様子。

 そのご機嫌斜めのユリアに扉越しにビビりつつ、俺は刺激しないように努めてゆっくりと優しい声でユリアに話しかける。


「あ、あのぉ、ワタですけど、今帰りました」


「……、ええぇ!陛下が!?い、今すぐ開けます!」


 俺とわかるとユリアは素っ頓狂な声を上げ、執務室の扉を開けてくれた。

 すると、そこには恐らく数日寝ずにやったのだろうか、目の下にはくまができていて、髪もぼさぼさのユリアがそこにはいた


「だ、大丈夫ですか?……、いや、大丈夫じゃないよ、ね?」

「陛下~、どうかこのユリアをお助け下さい……、ううぅ、もうかれこれ5日は寝られていないんです……」


 なんと驚くことにユリアは、俺が留守の間、どこぞのブラック企業並みの鬼畜勤務を強いられていたようだ。

 しかも、その机の上を見ると天井に着きそうな勢いの書類の山ができていた。


 (久々に見たブラック職場、今思えばちょっと昔までこんな状態の仕事をやっていたんだと思うと悲しくなるね……。その頃の俺でさえわずかだったけど寝ることはできたのに、ユリアはそんなことも許されなかったなんて……)


 俺も全く同じとは言えないが、こんな風につらい思いをしているのに誰も助けてくれない状況を経験してきているので、そんな状態の彼女を早く解放してあげたいという気持ちが沸き上がり、帰って来たばかりの体を奮い立たせ書類の処理を代わることにした。


「ユリアさん、今からここを代わりにやっておくんで、休んでいいですよ。あ、でもその前にメリアとエレオノーラにここに来るように伝えてください」

「え?え?」


 ユリアは極度の疲れから混乱し、俺の提案が理解できてない様子。


「いいですか?もう一度言います。ここは俺が代わるんで、休んでください。でも、休む前にメリアとエレオノーラに明日朝食後にこの執務室に来るように伝えてくれませんか?」


「えと……、いいんですか?」


「ここまで頑張ってもらったんで、休みましょう?そうじゃないと大事な体が壊れてしまいますよ?体が壊れては何もできませんからね?あとは俺に任せてゆっくり休んでください。明日の公務は全部取り消しておくんで」


「陛下……、あ、ありがとう、うっ、ごじゃいます」


 ユリアは眠れず苦しい思いの中ぶっ通しでやっていたことから解放された喜びと、俺のそのユリアの体のことまで気遣う言葉に大粒の涙を流していた。


 そんなユリアの背中を俺は優しくさすってあげる。

 しばらくすると、ユリアは落ち着きを取り戻す。


「つらかったですよね?いつもありがとうございます。ではごゆっくり」


「はい、本当にありがとうございます、ではお言葉に甘えて休ませていただきます。ですが、その前に引継ぎだけよろしいですか?」


 そのあと、俺はユリアから残っていた仕事の引継ぎを受けると早速書類とのにらめっこを始めた。


 これから俺の戦争(書類処理)が始まる。


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