327. 帰還
ヘリで空母に舞い戻った俺とメリア達は、疲れと眠気がどっと襲ってきたので、そのまま空母の上で一夜を過ごすことにした。
翌朝
空母アメリカで久々に優雅な朝のひと時を俺とメリア、ヴィアラの三人は過ごしていた。
この強固に守られた第一連合艦隊の中心に位置するこの空母アメリカにいるので、何かから襲われるということを気にしなくてよく、万が一何かがあっても優秀な将官が適切に対処してくれるので安心だ。
ここで食べる朝食は、俺自らがペーパーフィルタで淹れた少し濃いめのコーヒーと食パンにイチゴジャムを塗ったもの、さらにあらびき胡椒とケチャップをかけたスクランブルエッグだ。
出雲国内で出してくれた和食ももちろん良かったが、コーヒーと一緒に食べるパンとスクランブルエッグもまたいい。
三人は談笑しながら、小さな丸い窓から見える大海原を見つめ、ゆっくりと食事をとった。
「失礼します」
丁度俺達が食事を終え、食後の休憩のようなものをしていると、それを見計らったかのように一人の兵士が報告をしにやって来た。
「どうした?」
「報告!大和城駐屯部隊より「遠城帝より今回の件で話し合いの場を設けたい」と打診ありとのこと」
「わかった、その話応じよう。そう伝えてくれ」
大和城に駐屯する部隊経由で遠城帝が面会を打診してきたので、城に向かうことにした。
「此度の件、誠に面目次第もない、この通り」
城に入り本丸御殿に案内され、遠城帝が待つとされる大広間のふすまを開けた途端。
遠城帝に土下座をされ、その周囲にいた老中や遠城帝の息子たちもそれに倣って土下座をしていた。
遠城帝だけ白装束をきており後ろには二人の武士が控えていた。
(時代劇とかでよく見た光景だけど、まさか……)
恐らく彼は切腹をするつもりだろう。
「いやいや、むしろあれほどまでに杜撰な防衛体制を敷いてしまった自分が一番悪いと感じているので、遠城帝がそこまで責任を感じることはない」
「たとえ、そうだと申しても、こちらの持っていた情報をもっと早くに伝えていればこのようなことが起きていないと思うと……この責をとって、ここで切腹いたす」
遠城帝は今回湯之沢城で守るべきはずの客人である俺達を守れないどころか大した援軍も送ることもできず、送ったとしても数日後に到着という大失態を犯してしまったことを大いに反省しており。一武士として、一出雲国の長としてここで死してその罪を償おうとしていた。
「いや!まて!早まるな!」
俺は今にも腹に向けて短刀を突き刺そうとする遠城帝を大声で制止する。
「お気遣い結構、これは武士として生まれた者が名誉ある死に方。御免!」
それでも止めようとしない遠城帝に俺は再度止めるように声を荒らげる。
「そんなことをして許されると思うな!諸君らの風習ではそれが潔く名誉ある死に方なのはよく知っている。だがこちらからすれば死んで詫びるとはただの責任逃れとしか思えない!今すぐやめろ!」
流石に俺のその訴えに、遠城帝も渋々短刀を元の位置に戻す
「そこまで仰るならやめましょう。しかし、ここまで客人に……、いえ国王陛下並びに女王陛下にこのようなことをしてしまった我々にどう詫びろと申すか」
「なら、これより出雲国は何があっても永遠にコンダート王国の同盟国であり続けろ、そして出雲国内におけるこちら側の軍事、法執行機関の人員の行動の自由の保障と、出雲側の軍事情報を全て提供しろ。最後に館浜真琴をよこせ。これで許してやろう、どうだ?」
こうでもしないと遠城帝がまた何かしでかすと思い、かなり強引なことを求めた。
属国か植民地のようにしようかと一瞬脳裏をよぎったが、それでは間違いなく出雲国内の住民から猛反発を受けることが予想されるのでやめた。
それこそ元居た日本と全く同じ大和魂のようなものを持っているのであれば、逆にこちらが手酷い“火傷”を負う可能性もある。
ただ、最後のは完全に個人的感情だが。
「あいわかった、その提案この遠城の名に誓ってお受けいたす」
「本当にいいのか?しかもそちらにとって重要な人物をよこせと横柄なことも要求しているんだぞ?」
「それこそ、その点に関しては、貴国の海軍の軍人殿が教えてくれて今後優秀な海軍の者が誕生するとなれば、問題はない。それに我々が製造することが出来ない兵器をこちらに売り渡してくれるという良心的な提案を既にしてくれている故、これ以上何を望むというのだ?」
遠城帝はかなり強引な提案をすんなりと受け入れてくれた。
それに周りにいた重鎮たちも同時に頷いていたので、これはこれで良しとしよう。
「そうか、ならよかった。細かい話はあとで関係閣僚を通して行うとしよう」
「ははぁ」
「さて、要件はこれだけのようなら帰らせていただいてもいいですかね?この後は練兵場で有償軍事援助兵器の品評会があるので」
「ご足労頂き感謝いたす、要件は以上。今後とも良しなに」
「では、これにて失礼」
遠城帝には悪いが、さっさと話しを終わらせて帰りたいという気持ちが強くあった俺は、最後冷たい態度をとってしまっていた。
何故そこまでして話を終わらせたいのか?
それは単純にこの戦闘続きのこの状況から脱するために国に帰りたいからだ。
そのままの足で俺達は練兵所へと向かった。




