326.戦闘終結
第二海兵師団と各航空戦力の援軍によってようやく終結したが、それまでの代償が余りにも大きすぎた。
湯之沢城に集結していた王国側の兵力は当初4160名もいたが、現在250名まで大幅に減っており、その残っている兵達は元々あった所属部隊が壊滅若しくは全滅してしまっていた。
そして今はその生き残りによって構成された“寄せ集め”部隊だけとなってしまった。
帝国軍の掃討作戦を行った第二海兵師団の被害が加わった最終的な被害は、戦死3789名、行方不明97名、重体39名、重傷26名にまで上っており、これまでの現代兵器武装後に帝国軍との直接的な戦闘で受けた被害の中で史上最悪となってしまった。
それにしてもなぜ帝国軍がここまで急激に兵士を増員させ激しい攻勢を仕掛けて来たのか?
そして裏門を守っていた兵士が証言している「突撃してきた兵士の3人に1人が武器を持っていなかった」というのはどういうことなのか?
その謎は第二海兵師団が掃討作戦をしていた時、帝国軍の陣地から押収されたものによって解かれた。
押収されたのは、20基もの白い台座のようなものに載せられた円柱形のガラスケースと、その近くのテントから発見されたこのガラスケースの使用方法と作戦指示書と魔石だ。
その使用方法を読むと、どうやらこれで“ホムンクルス”……、つまり人造人間をつくっていたことが分かった。
なんでもこのガラスケースの中にその人造人間の核となる魔石と、その魔石に魔力を送りこむ魔術師によってホムンクルスをつくる仕組みになっているようだ。
そして作戦指示書にはこう書かれていた。
ホムンクルスを王国国王が滞在している城もしくは拠点の近くで生成し、そのホムンクルスに武装させ突撃させること。
これにより少数の部隊移動で済み敵に発見されづらくなる。
生成するホムンクルスは全て無性別であること。
武器は全員に持たせなくてよい、その代わり武器を持っていない個体は突撃の際に倒れた他の個体から武器を奪うように指示をするように。
撤収の際には生成器を完全に破壊し、指示書や説明書を全て焼却すること。
ホムンクルスがもし戦闘で生き残った場合、その場で必ず“処分”すること。
これは最高軍事機密である。
このように帝国は敵地に必要最低限の部隊を侵入させ、現地でホムンクルスを生成し一気に頭数を増やし攻撃するという恐ろしい作戦をとってきていたのだ。
そして、その作戦は戦闘開始時点では見事に成功を収め、王国軍に多大な損害を与えることができた。
ただ、その作戦は結果的に帝国側の敗北と機密文書流出ということで王国側が知られてしまったのは大きな失敗だろう。
一方その頃、表門から何とか逃げ出すことに成功したワタ達一行。
表門から出て大和城に向かっていた俺達は途中、帝国軍からの攻撃は一切なく拍子抜けしていた。
そして、表門から出て峠を登っていたとき、湯之沢城の裏門の方角を見ると大きな爆炎や煙が立ち昇っているのが見えていた。
その光景を見た俺は、帝国軍の砲撃が始まったのではないかと危惧していたが、それは俺の乗っているM2ブラッドレイに届いた通信を聞いて、その思いは吹き飛ぶ。
「国王陛下!第一連合艦隊司令部からの通信が入っています!」
「なんて言ってる?」
「はっ……、先ほど湯之沢城裏門に空輸された第二海兵師団が到着した模様。さらにその護衛についていたAH-64Eの編隊が機銃掃射とロケット弾を発射し帝国軍の足止めを行い、そのあとに空母遠征統合艦隊から派遣された戦闘機が空爆したとのこと」
「そうか!やっと無線通信が復帰したんだな!それで、現地の状況は?」
「まだ、そのことに関しては情報が来ていません」
通信機器への妨害は排除出来ていたが、そのあとの故障もあって大和にいる本部との連絡ができていなかったが、その通信機器が無事復帰してようやく通信が行える状況になったようだ。
そして、ようやく近接航空支援と空爆が行われた湯之沢城裏門を守る兵達はホッと一安心できただろう。
「国王陛下」
「今度はなんだ?」
「国王陛下宛に電話が来ています」
峠を越えた頃、ブラッドレイに搭乗していた通信兵が俺に無線電話機の受話器を渡してきた。
渡された俺は、相手がだれかわからないまま応答する。
「俺だ」
「そ、その声は国王陛下!本当に無事だったんですね!……良かった」
「ああ、俺は無事だ、君は誰だい?」
「し、失礼しました、ミサです!」
電話の相手は3つの空母打撃群を指揮するキーレ・ミサ中将だった。
彼女も通信が全くつながらなくなってしまったこともあって、俺のことを相当心配してくれたことがうかがえる。
「ミサか、心配かけてすまんかった。それより何か用があるんじゃないのか?」
「いいえ、無事で何よりです!……本題ですが、先ほど空母アメリカからヘリを一機発艦させ陛下御一行をお迎えする為向かわせたので、そのヘリに乗ってお戻りください」
「わかった、ありがとう。また、後で会おう」
「はい、お待ちしております。では、失礼します」
電話を切って受話機を通信兵に返すと、俺は深くため息をついた。
俺のその様子を見て、隣に座っていたメリアが微笑みながらそっと頭をなでてくれていた。
「よかったわね。これで、ようやく一息付けそうね?」
「そうだな、それにようやく寝ることもできそうだしな」
そして峠を下って開けた場所で待っていると、迎えのヘリがやって来てくれた。
これでようやく昨夜から続いていた危機から脱することができ、十分にとれていなかった睡眠も安心してとることができる。




