323.帝国兵の再来2
「“こちらM1B!M1B!帝国兵が前方に現れた!交戦許可を!どうぞ!”」
安心したのも束の間。
無線機からは裏門を守る部隊からの通信が入ってきていた。
その声から、現場はかなり緊迫した状態が伝わってくる。
「こちらHQ、敵の数は?どうぞ」
「“およそ1万……いやそれ以上!既に前方は敵が埋め尽くしている!どうぞ!”」
敵はこちらの予想よりはるかに早い段階で攻めて来た。
しかも、あれだけ被害を受けていたはずだ。
それが今や裏門に大挙して押し寄せて来ている。
通信兵が交戦の許可を求めようとエルノイド大佐の方を見るが、エルノイドは予想以上の敵の動きの速さに混乱し少しの間腕を組んだまま固まっていた。
「……エルノイド大佐殿、いかがなさいますか?」
「エルノイド大佐!」
「……交戦を許可する、味方の来援あるまで一歩たりともこの城に敵を踏み入れさせるな!」
「了解!」
「こちらHQ、交戦を許可する。繰り返す、交戦を許可する。なお、来援が10分後に到着予定、それまで耐えてくれ!どうぞ」
「“M1B!了解!来援はどれぐらいか?どうぞ!”」
「この後ヘリボーンで第二海兵師団が。陸路で第一海兵師団本隊と第一海兵戦車師団、第一海兵武装偵察連隊第一、二、三大隊が到着予定」
「“了解!アウト”」
ところ変って裏門内
ここには昨夜の戦闘で被害を受けた第一二一海兵連隊第一海兵歩兵大隊と、同じく被害を受けていた第四海兵武装偵察連隊第四一大隊第一中隊を集結させ防御体制を整えていた。
しかし、そんな準備もままならぬうちに、帝国兵が一挙にこちらに押し寄せて来ていた。
「敵襲!敵襲!みんな配置に着け!」
門の上の櫓で周囲を監視していた兵が大声で叫び、敵が攻めて来たことを知らせる。
その声に素早く反応した兵士たちは、各々が休憩していたテントなどから一斉に飛び出し、各即席バンカーや塹壕へと走る。
昨夜の戦闘で相当疲れているはずだが、陛下が逃げきるまで、なんとしてでもこの場所を死守しなければならないという使命感に駆られている彼らにとって、そんなことは些細なことに過ぎないようだ。
配置についた兵達はすぐに銃に弾を込め、前方の敵に照準を合わせる。
「エルノイド大佐には報告したか?」
「はい!交戦許可も下りています」
「そうか。敵との距離が400mをきったら、全力射撃を開始するように皆に伝えてくれ」
「了解!」
この裏門の防衛部隊を裏門の櫓の上から指揮するレイン中佐は、部下にそう伝令を頼むと、険しい表情のまま敵の居る方角を双眼鏡で覗いていた。
そこには、防具というものどころか衣服もほとんど付けておらず、ボロボロの布で大事なところだけを隠しているだけのまるで石器時代の人たちのような見た目をした集団があった。
その防具をつけていない帝国兵と思われる人達は、半分の割合で槍と弓で武装していた。
その集団の中にちらほらとしっかりとした防具に身を包んだ見慣れた帝国兵が混ざっていた。
恐らくその防具をしっかりと身に着けた帝国兵が、彼らの指揮を執っているのだろう。
(いったいこいつらは何を考えているんだ?もしかして帝国は周辺の村を襲って、その村人を徴用したのか?)
レイン中佐は目の前の状況を理解できずにいたが、そんなことよりも目の前に置かれたこの状況をいかに対処できるかということで頭がいっぱいになっていた。
そして、敵はこちらが陣地に配置に就いたとほぼ同時に、雄たけびを上げながら一斉に突撃を開始した。
「て、敵が突撃してきます!」
「まだだ!まだ撃つな!敵をこっちに引き付けろ!」
敵の一斉突撃に兵士たちは恐怖を感じるが、現場指揮官は焦る様子を見せず、敵が向かってくるのをじっと見つめていた。
「まだだ、まだ撃つなよ!」
敵はその間に土埃を上げながら徐々に裏門との距離を縮めてくる。
それでも防衛側は静かにそのときを待った。
「……、まだだ、後少し……、よし!今だ!射撃開始!!」
ダダダダダダッ!ダダダダダダッ!ダダダダダダッ!
その号令を聞いた兵士たちは一斉に射撃を開始した。
一斉に発射された銃弾は、雨のように敵に降り注ぎ、隊列の最前列を削りとっていく。
しかし、そんな激しい銃撃を受けても敵の突撃は止まらず、味方の屍を踏み越えこちらに向かってくる。
「ひるむな!撃て!撃ちまくれ!弾はいくらでもあるぞ!」
現場指揮官は今だ止まらぬ敵にひるむ味方を鼓舞しながら、自身も陣地に備え付けられているM240Bを撃ちまくっていた。
「クソッ!ゴキブリみたいに湧いてきやがる!」
これだけ全力で射撃しているにも関わらず、敵の勢いは収まる様子をみせず、それどころか勢いを増していているようにも見える。
そして、突撃開始から3分後。
敵との距離は100mまで縮んでいた。




