320.遠城帝の甘い考え2
「はっ!先ほど外事奉行、山本直義殿がそう申されておりましたので、まず間違いないかと」
「そうか、わかった。すぐにここをたつとしよう、ご客人に万が一のことがあってはならないからな」
「では、そのようにお帝様にお伝えいたしまする、某はこれにて」
伝令は遠城帝からの出撃命令を十四郎に伝えると、すぐに踵を返し城へと戻っていった。
(まさかとは、思うが、あれほどまでの強力な軍勢を持つご客人たちが帝国兵に後れを取るとは思わんが……)
この情報を聞いた十四郎は、王国軍の強力な兵力を持っているので心配はないだろうと思う反面。我々が知らぬ間に既に帝国兵がこの国に潜んでいたことを考えると、今後帝国が何をしてくるか予想がつかず不安を覚えていた。
一先ず命令を受けた十史郎は、すぐに配下の騎馬隊をすぐに参集させ、自らも馬にまたがり越之国へと向かう。
その道すがら、出雲側が用意してくれた駐屯地へと向かう王国軍海兵隊第一武装偵察連隊連隊長グレン大佐とその部下達をのせたハンヴィーの車列とすれ違った。
その時十四郎はその車列の真ん中のハンヴィーに乗っていたグレン大佐を見つけ、馬の上から軽く会釈をしていた。
グレン大佐は会釈をしてきた人物が十四郎だとわかると、車を止め、外に出て敬礼で答える。
「これは十四郎さん、こんにちは!……これから演習でも行かれるのですか?」
「おおっ、グレン殿!お元気そうで何よりです。……ああ、いえね、恐らくこれは存じているとは思うが、これから某らは越之国の湯之沢城に向かうゆえ」
「それは……、何故です?」
「……、実は貴殿らの国王様と女王様が今居られる、越之国の国内に帝国の軍が潜んでいるという情報があったのでな、その調査と万が一の為の我らということ」
「……、そうか、そういうことか」
「グレン殿、如何された?」
グレン大佐は十史郎から聞いた話に驚きと焦りを隠せずにいた。
突然のことにその焦った表情をしていまい、十四郎も不安そうな顔をしている。
「ああ、じつは……、昨日の夕方過ぎたあたりから湯之沢に展開しているはずの部隊との無線通信が途絶えていて……」
「なんと!それは……、こうしてはおれん!グレン殿某らはこれにて失礼!湯之沢でまた会いましょうぞ!」
「ああ!おい!聞いたか!すぐに駐屯地に戻るぞ!」
十史郎と別れた後、すぐにグレン大佐は駐屯地に戻り、事の次第を第一海兵遠征軍のレノア大将と連合艦隊参謀総長のリディアへと通信を入れ、越之国の危機を報告。
報告を聞いたレノア大将はそれをもとに全派遣部隊を上げて湯之沢城への救援に向かうことを下令していた。
その第一段階として海兵隊全部隊への出撃命令が下され、レノア海兵隊大将直接指揮の元湯之沢へと行軍を開始。
これがうまくいけば全部隊が到着するのは明日の昼頃になるだろう。
二段階目は越之国の上空に艦隊に所属する全航空戦力を展開させ全力で航空支援を行うこととなった。
いよいよ、王国軍による反撃が開始する。




