318.状況報告2
「みんな、ありがとう」
「陛下……」
「ん?どうした?」
黙祷をささげた後、ミセア大佐が申し訳なさそうにこちらに声を掛けて来ていた。
「此度の陛下の危機に助けにも行けず、申し訳ございません」
どうやら、彼女は相当身辺を守れなかった事を気にしていた様子で、彼女もその責務を果たせなかったという気持ちが大きくなりすぎて、今にも泣きそうな顔をしてしまっている。
「いいんだ、ミセア、表門の守備は俺が命じたことなんだから。むしろ最後まで持ち場を離れず守ってくれてありがとう。君たちのおかげで逃げる道は残されているって、ここにいるみんなが思うことができたからね。むしろ謝るのはこっちの方なんだ。君たちを近くにおいて守ってもらうのが本来の任務なのに、関係のない表門を守らせていたんだから」
「あ、ありがとうございます」
「しかも、あそこを君たちに守ってもらっていたのは、俺らにとって“最後の頼みの綱”であるミスティア隊が、助けてもらう前や逃げる前にいなくなってしまっては困るっていう戦略的な意味もあるんだ」
「陛下……。んんっ!これまでの弱音どうかお忘れください!我々は最後の砦として今後も陛下をお守りいたします!」
どうやらミセア大佐は、俺の最後のはなしを聞いて理解してくれたようだ。
「さて、湯之沢城の人たちがどうなっているかわかる人いる?」
「はっ!それについても私から」
俺の疑問に答えてくれたのは、さっきも報告してくれていたエルノイド大佐だ。
「まず、湯之沢城の損害状況ですが、民間人を含めた人的損害は死者320名、重軽傷者45名。物的損害は本丸御殿の一部が爆発などにより一時火災が発生、さらに二の丸付近でも中規模の火災が発生し、二件とも消し止められましたが被害の大きかった二の丸は半分以上が消失しています」
帝国の攻撃によって湯之沢城側も少なくない損害を受けていて、被害は防衛に当たっていた守備兵のみならず文官や雑用を行う使用人などの民間人まで及んでいた。
「そうか、民間人まで巻き込んでしまったか……、範頼さんは?」
「はい、湯之沢城の城主範頼殿とその奥方弥々殿は現在、表門近くで展開している連隊本部付衛生小隊の治療を受けており、お二方ともに無事です。しかし、範頼殿の最側近であった重左エ門という方が主人を逃がそうと囮になり、帝国からの多数の銃弾を受けた後胸に剣を突き刺されるという壮絶な戦死を遂げた模様です、そして重左エ門の側近たちもまた銃弾を全身に受け戦死したそうです」
「まさに大和魂ここにありだな……」
俺はその重左エ門という人の主人である範頼に対する忠誠心と勇敢さを聞いて、ぼそりとそうつぶやく。
しかし、その言葉の意味を知るものはここにはおらず、皆怪訝そうな視線を俺に送っていた。
「陛下?そのやま何とか魂とはいったい?」
「いや、なんでもない、続けてくれ」
「はっ!失礼いたしました。報告は以上です」
「ありがとう。あとはこれからのことだが……」
報告を一通り聞き終わった俺は、これからこの地から避難する案と、同時にこれから予想される帝国の攻撃の対策案を提示していた。




