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313.戦闘終結

 一方ローザは敵の“死体”から自分の剣を引き抜く。

 足を撃たれ動けなくなった敵に対して、ローザは容赦なく剣を心臓に突き刺していたのだ。

 突き刺された敵は天井を見つめ、その眼からは大粒の涙が流れ出す。


「……様、……サン様、生きて……」


 そして何か小さくつぶやいた後、その女は静かに息引き取った。


「私が殺してしまった貴女にもきっと愛する人がいて、貴方もその人の為に戦っていたのよね……」


 私はその敵の女が想いを寄せていたであろう人を思い浮かべながら、その敵の女の光を失い開いたままになってしまった瞼をそっと閉じてあげる。


「でもごめんなさい。私にも守らなくちゃいけない人がいるの。……安らかに」


 そう声を掛け、私はその敵に手を合わせた。


「もし、本当にあの時ワタに援護してもらわなかったとしたら、私がそこに横たわっていたのかもしれないのよね……」


 私は一時、一方的に敵に攻められるだけであったが、一転、ワタが撃った銃弾が敵に命中した後からは私の有利に傾いた。

 足を撃たれ動けなくなった敵は大した抵抗もできず、最期は私を睨むことしかできなかった。

 しかし、もしワタが途中援護してくれなかったら、私は逆の立場になっていたかもしれない。


「ふぅ、そういえば、ベルは無事かしら?」


 自分とワタの身に危険がないことを確認すると、近くで戦っていたベルのことが気になり、彼女の戦っていた場所に向かう。


「グヘヘ、死ネ、死ネ!」


 彼女の元へ向かった私がそこで見たものは、ある程度は予想していたがなっていてほしくない状況が起こっていた。

 そう、そこにはカオスモードの状態で気絶した相手を殴りまくるベルの姿があったのだ。


「はぁ……、そうよね、そうなるわよね……。心配した私がバカだったわ」


 私はその光景に呆れ、額に手を当てため息をついてしまう。

 しかし、そのまま放っておいては事態が悪化すると考えた私は何とかしてベルを止めるべく頭を巡らす。


「ベル!そこまでよ!敵はもう動いていないでしょ?」

「ダァレ?ヒヒヒッ!」


 私の声に反応したベルは、ゆっくりと首だけを動かし私のことを見てきた。

 見ると、その顔や手には殴っていた相手の血がべったりとつき、そしてベルは不気味な笑顔を浮かべていた。

 まるでホラー映画に出てくるような殺人鬼を見ているようだ。


「ヒィッ!」


 さすがにベルのその姿を見た私は恐怖を感じてしまい、後ずさってしまった。

 しかし、ベルをそのままにしておいては相手の女性は原形を留めなくなってしまう。


「ベ、ベル?」

「ナァニ?アナた邪魔モノ?」


 どうやらこの状態になってしまったベルを元の状態に戻すには一筋縄ではいかないようだ。

 だからといって強硬手段で相手から引きはがそうとしようものなら、また暴れだして収拾がつかなくなってしまうだろう。

 しかし、こうなった場合“最終手段”があるのだ。



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