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312.城内戦闘8

 

 場所は戻って本丸庭園


 プロミネンスフレイアをいとも簡単に避けエレザは完全にネラがこれ以上の攻撃はしてこないだろうと油断していた。

 しかし、ネラが放った“エクスプロージョン”という爆裂魔法がエレザに直撃し、その衝撃と爆風によってちょうど後ろにいたレナごと吹き飛ばされていた。


「グハッ!」

「ううっ!」


 飛ばされた二人は庭園の周りを取り囲む塀にぶつかり、爆風の熱波によって所々が茶色く焦げ、ぶつかった衝撃で内臓を軽く損傷したのか吐血している。

 かなりのダメージを負った二人は、壁の瓦礫の上でピクリとも動かない


「ハァ、ハァ、ハハッ!見なさい!まだまだこんなもんじゃないんだからね!油断していたのが運の尽きね」

「ネラ、さっさと“処理”して私と愛し合いましょう?」


 ネラが動かなくなった二人を眺めていると、後ろからもう一人黒いマントをかぶった女性が現れた。

 その女性はネラの後ろから抱き、ネラに口づけをする。


「んっ、コンリナ、それはもうちょっと待っててね?」

「はい……、とりあえず殺してしまいましょうか?」

「そうだね」


 ネラはコンリナともう一度キスをすると、目を閉じ持っていた杖に魔力を込め始める。

 コンリナはその魔力供給を早めるため、後ろからネラの腕をつかみ自分の魔力もその杖に注ぎ込む。

 魔力の高まりと共に杖の全体には炎のように輝く。


「……そうはさせない!」


 バンッ!バンッ!バンッ!


 ネラがあと少しで溜めていた魔力を開放し、今もピクリとも動かないエレザとレナに向けて放とうとした瞬間。

 その進路をふさぐようにミレイユが飛び出していった。

 彼女はあらかじめワタに頼んで用意していたM1100というセミオートマチックショットガンを敵に向けて撃ちまくる。


「なっ!うっ!くっ!」

「きゃーーーー!」


 魔力を込めることに集中して周囲への警戒を怠っていた二人は、ミレイユが放った散弾が見事命中。

 二人はそのままその場に崩れ落ちていた。


 ミレイユはネラとコンリナが倒れたことを確認したあと、銃口と視線をそのままにしながらエレザとレナの元に歩み寄る。


「お姉さま!お姉さま!」

「……う、ううっ……、痛たた。その声はミレイユか?」


 エレザは意識を戻し、ふらつきながらも何とか立ち上がっていた。

 そんなエレザにミレイユは居ても立っても居られなず抱いていた。 


「お姉さま!お姉さま!」

「おっと、よせ、まだ痛むんだ……。でも来てくれてありがとう、心配かけたな」

「よかった……」

「レナ?レナはどこ行った?レナ!」


 エレザはさっきまで一緒に戦っていたレナがいないことに気付き周囲を見渡す。


「お姉さま……、うしろ」

「ううっ……」


 エレザはミレイユに言われ後ろを振り向くと、ちょうど起き上がってきたレナの姿がそこにはあった。


「レナ!大丈夫か?」

「え、ええ、何とか」


 レナもエレザと同じようにふらついてはいるが何とか立てるようだ。


「あれ?ミレイユさん?なぜここに?」

「……助けに来た」

「それはありがたいですが、陛下の護衛をしていたはずでは?」


 確かにミレイユはエレザとレナが寝室前からいなくなり、守る人がいなくなることを危惧して残ってくれていたはずだ。


「……大きい音がした、……心配になった、レナのことワタが呼んでる」

「……なるほど、そういうことでしたか」


「……ここは、私とお姉さまだけで何とかする、……いって」

「レナ、行って来い。ワタのこと頼むぞ」

「わかりました。二人ともご無事で!」


 そう言い残すとレナはふらつく体のまま、ワタの元へ戻っていった。



「さてと、よくもやってくれたな!お二人さん!」


 エレザはレナがワタの方へと歩いていったことを見届けると、抱き合いながら倒れるネラとコンリナの元に近づいていく。

 その後ろから、ミレイユは再びM1100の銃口を二人に向けながらエレザについていく。


「ハァハァ、ハァ、グフッ」

「……ううっ」


 ネラとコンリナは腹部や腕に大きな穴のような傷が出来ており、そこから大量の血が流れだしている。

 血を一気に失ったことで意識も混濁し始めている。

 このままいけば二人はまず間違いなく大量出血による失血死するだろう。


「……お姉さま」

「ああ、放っておいても死ぬだろう。ワタのところに私たちも行こう」

「……はい、お姉さま」


 既に死にかけている二人に対してエレザは何もせず、そのまま放置することにした。

 そしてエレザとミレイユは主人の待つ場所へと戻っていった。





「ハァ、ハァ、ネラ」

「コンリナ……」


 エレザとミレイユにとどめを刺されず放置されたネラとコンリナ。

 薄れていく意識の中、愛し合う二人は手をつなぎ“最期”の時を過ごしていた。


「コンリナ、愛してる……よ」

「ネラ、私も……です」

「死んだ後も一緒に居られるかな?」


「いいえ、ハァ、ハァ……、死んでも一緒にいましょう?」

「ハハッ、そうだな……、それにしても、誰も助けに来ないな」

「……ええ、もう助けに来る人は……残っていないと思います」


 もし、ここで他の兵が助けに来てくれたとしても、二人が“死”というものから逃れることはできないだろう。

 それほど二人が受けた傷は深い。


「……もう、疲れたよ、コンリナ……」

「このまま、一緒に寝ましょうか?」


「そうだな、そうしよう、お休みコンリナ」

「お休みなさい、ネラ」


 そうして二人は長い長い眠りについた。


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←いつも読んで頂きありがとうございます。
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