26.キューレ救出作戦
リザードマンが村の周辺から完全に撤退したことを確認した後、村の防衛はそのまま村の衛兵たちに任せ、急遽編成したワタ達強行偵察隊はリザードマンの敗残兵が向かった方向と以前村人たちが偵察した時に存在したであろう基地の位置を参考に敵基地の探索を開始した。
この作戦を遂行するにあたって、新たに召喚をして武器と装備品追加をおこなった。
今回追加したものはHK416と呼ばれるドイツのヘッケラー&コッホ社がアメリカ軍のM4を独自改良・強化し、5.56×45mmNATO弾を使用する銃である。
HK416はM4と違いショートストロークピストンと呼ばれる機構に変更して対塵性と耐久性を向上させた。
特筆すべきは泥水や砂の中につけた後に撃っても何の問題もなく動作させることができる事であろう。
これに近くの標的に素早く狙いをつけやすくすることができるEOTech社のホロサイトをつけておく。
さらに非殺傷手榴弾で閃光と大音響を出し相手をひるませるための特殊閃光弾(通称“フラッシュバン”)も召喚した。
これはよく警察の特殊部隊などが人質救出時や立て籠もり犯を怪我させることなく且つ無力化したうえで安全に制圧するために使われる。
これらを召喚したのは今回の作戦の主な目的が村長の娘さんを救出しに行くことなので建物内に潜入する前提の装備品を用意した。
それに加えて、いざという時と合図用に小型無線機とヘッドセットを皆に持たせた。
狙撃要員をベルにして、サプレッサー(銃口の先に取り付け発砲音を“減音”するもの)とスコープを取り付けたSIG716を持たせ、ベル以外の三人には突撃要員として、HK416をもたせた。
エルベの村を出発して森の中を捜索し始めて半日ぐらいたってから、森が開けた草原のような場所にたどり着いた。
そこには小高い丘を背にした石造りの大きな家があった……。
家は三階建てでその隣には倉庫のようなものもあり、リザードマンたちにはモンスターながらこのようなところを住処(巣?)にしてしまう知能があるのだと実感した。
ただ、あまりにも外観がよくできていて、さらに庭もついているので、この家は、もとは人間のものだったことをうかがわせる。
「見ろ!あそこに家があるぞ、しかも家の周りに見張りまでいるからきっとここに違いない」
「しかし、ワタ殿。どのようにしてあの家に潜入するのです? そのまま突入したら人質が殺害されてしまうのでは?」
「いい質問だシルヴィア、見たところ家の後ろに丘があるからそこからシルヴィアとベルに狙撃してもらう。それで敵が釘付けになっている間に、俺とエレザとミレイユで表の入り口から強襲する」
「流石ワタ様よく考えていますね!」
「……ということで、作戦開始!」
一行は森から出た後にベルとシルヴィアは丘の上の狙撃ポイントに向かい、俺自身は家を大きく迂回しベル達のいる丘の反対側のリザードマンの屋敷の正面玄関に向かった。
俺は突入前にマイクテストと合図をかねてヘッドセットのマイクを使用する。
「ベル聞こえるか?」
「聞こえています!見えない場所からこえが聞こえるなんて感激です!耳にじかに声が響いて興奮します!はぁはぁ……」
(ん?どういう事でしょう?最後に何か聞こえたような気がするような?)
「えっと……そちらから内部の状況を伝えてくれ」
そう言われたベルはさっきの呆けた顔から真剣なまなざしに変え、SIG716に取り付けられたスコープを覗き、ベランダから部屋の中を観察する。
「ここから人質であるキューレさんと思しき女性が二階の部屋にいるのが見えます。その女性を複数人のリザードマンが取り囲んでいます!」
「しかも、ぜっ、全員服を着ていません!キューレさんが……」
「何!すぐにキューレに近い奴から狙撃を開始!」
「了解!」
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