299.湯之沢城防衛戦6
「手りゅう弾!」
ドン!
ミスティア隊の面々は自分たちが持ちうる火力を総動員して何とか迫ってくる帝国兵を退けようと必死になるがそれでも帝国兵の進撃は緩まなかった。
それどころか敵は銃や火矢を飛ばしこちらに反撃を加えてくる。
帝国の反撃は散発的だったが、その仲間が死してもなおその屍を超え痛みや死を恐れず突っ込んでくる帝国兵をみたミスティア隊の隊員たちは少なくない恐怖を感じていた。
「敵だ!」
「敵が入って来たぞ!」
「であえ!であえ!」
そんな激しい攻防戦の最中、突如として今までほとんど動きのなかった城の守備兵達が参戦してきた。
いまここにやって来た彼らは城主と同じ本丸にいる陛下やヴィアラ達の周辺の警護をしていたはずだった。
「おい!まて!今敵の目の前に出ると弾が当たるぞ!」
「危ないぞ!とまれ!」
「止まって!」
城の守備兵には機関銃の弾が飛んできていることが頭に入っていないのか敵の方向へまっすぐ突っ込んでいってしまっていた。
それを必死に叫び制止しようとするミスティア隊の兵士たちであったが、その必死な叫びは目の前の敵を蹴散らし武勲を上げようとすることしか考えがない彼らに届くことはなかった。
「ああっ、もう!機関銃班!射撃中止!射撃中止!各自接近してきた敵だけ撃って!」
「「「「了解!」」」」
同士討ちが発生してしまうことを恐れたレナは機関銃班へ射撃中止命令を下した。
激しい銃撃がやんだことによって帝国兵達はすぐに体勢を整え始める。
後ろから銃弾が飛んでくることがなくなったのを知ってか知らずかさらに勢いづいた守備兵達は坂を駆け下り、その勢いのまま帝国兵に持っていた槍や刀等で斬りかかっていった。
不意に突撃してきた城の守備兵に帝国兵達は新手の出現に一瞬ひるんだが、すぐに縦列隊形をとり生き残っていた弓兵や銃兵達が射撃を開始していた。
突っ込んでいった守備兵達は帝国兵によって一斉に放たれた矢や銃弾によって死傷者が続出してしまう。
「このままではいけない、歩兵小隊!盾を持って守備兵の援護を!」
「「「了解」」」
それを見たレナは暴徒鎮圧時にも使われるポリカーボネート製の防弾シールドを歩兵小隊に持たせ守備兵の援護に向かわせた。
小銃弾にも耐えうるこの盾があれば帝国の銃弾や矢を防ぐには十分だろう。
「(クソッ!私の指揮下だったらあんなことさせないのに!)」
守備兵達の無謀な攻撃を見てレナは歯がゆい思いをしながらその状況を見守っていた。
バババババババババッ!ダン!バンッ!
「何事!機関銃の射撃は停止させたはずよ!」
「わかりません!ただ帝国兵に攻撃していることから我々の敵ではない模様!」
突如として機関銃やアサルトライフル等の銃撃音、さらに手りゅう弾による爆破音が鳴り響く。
その激しい銃撃によって一旦は体勢を持ち直した帝国兵達は一気に崩れた。
「レナ大佐!援護する!」
レナは声がする方向に振り向くとそこには裏門を守っていたはずのエルノイド大佐が駆け付けてくれていた。
「エルノイド大佐?裏門の守備は?確か敵が攻めて来ていたはず……」
「それならもう倒してきた、裏門はもともと守っていた門の守備兵に任せて来た、もうあちらには敵が来ないだろう」
どうやら先ほどの射撃は海軍特殊部隊チーム4がやったもののようだ。
「もしまた攻めてきたらどうするんですか?」
「そしたらまた俺達が飛んで行くさ……、それより目の前の敵が先じゃないのか?」
「そ、そうですね」
こうして海軍特殊部隊チーム4の増援を得たミスティア隊は帝国兵の残党を倒しつつ負傷した守備兵達の救出を始めた。
しかし、この時大きなものを見落としていることに気付いていなかった。




