24.エルベ村防衛作戦3
村の農場から約1000m離れているところにリザードマンの部隊が集結し始めたらしいとのことだった、しかもその数は目測でも二千に近い数がいるそうだとの知らせが見張りの村人よりとどいた。
それを聞いた村の人々は俺たちをみならってか、土嚢を積みだしその内側に穴を掘り陣地を築き、村中の弓と矢をかき集め出した。
敵接近に伴い俺たちは陣地内にM240を五挺運び込み、二脚を立て、さらに予備弾倉も運び込む。
「そろそろの様だな……、トカゲ野郎どもが来るぞ!ベルはそのM240で銃撃を絶え間なく与えるようにな!」
「ハイっ、このベルが役目を果たさせていただきます! ただここから一歩も出ないつもりでいるのですか?」
「いい質問だベル君! ただその答えはこの戦闘が終わりにさしかかったときに分かるであろう! 何つって……そんな不安そうな目で見ないで大丈夫だから」
「御話し中申し訳ありませんがワタ殿。そろそろご準備を!そろそろ会敵します!」
そう言って、周りの兵士とは一風変わった露出度の高い皮の鎧を着た、目のやり場に困るほどの妖艶な体つきで肩まで伸ばした銀髪の女性兵士が報告してくる。
村長から今後いろいろとあるだろうとのことで、俺の護衛として付けてもらった。
このダークエルフの女性兵士の名前はシルヴィアと言って、以前とあるダークエルフ族の村の村長であったが帝国軍の侵攻により村の住民全員が散り散りになってしまい、自身も単身で戦火から逃れていた、そんなところを村長に傭兵として雇ってもらったらしい。さらに彼女は自称コンダート国内最強ダークエルフと言っているようだ。
自称とは言うものの実際の格闘戦闘能力は村長曰く、少なくともこのエルベ村の中では一番強いそうだ。
しかし、ダークエルフと聞くとやはり……いかん! ダメだ!と思いつつ、胸、見ちゃいますよね~報告に来るたびそこだけ揺れていますよお姉さん……
「どうかなされましたか?ワタ殿?」
シルヴィアは自分に向けられた下心満載な視線を向けられても、まるで少女のようなきらきらとした碧い眼でこちらを見てくる、しかも、シルヴィアの肩ぐらいまで伸ばした髪が揺れるたびに、甘い香りがしてくる、この世界にも香水があるのだろうか……
「ワタ様ッッ!」
そんなことを考えていたら、横から頬に強烈なビンタをベルが食らわせてきた。
「痛いって、悪かったよ……何もカンガエテナイヨ、ボクワルクナイ」
「ム~、もう知りません!」
「だから悪かったって、許して! ……分かった本当のことを言おう!愛してる!」
「「!!??」」
アレ?またしても何を言っているのだろう?
「そ、そそんな……、ハイ!好きでしゅ!」
言った本人はまた自滅したと思い、ベルに関しては急な告白に口と思考がついていけず、噛み噛みになってしまい、第三者的な位置にいるシルヴィア達はどうしていいのか分からずただ立ち尽くすばかりであった。
「敵襲!」
そんなことをやっているうちに、どうやら敵がこちらに接近してきたようだ。
「いよいよ、本番ですねワタ様!腕がなります!」
みると500m先の農場の方角からこちらにゆっくりと近づいてくる、リザードマン部隊を発見した。
あの部隊は数からみて、恐らくこちらを偵察しに来たのだろう。
その様子を視線の片隅でとらえながら、敵がこちらに来る前にM240を射撃準備をはじめる。
まず装填ハンドルを手前に引きボルトと呼ばれる部分を銃後部に固定し、その後装填ハンドルをもとに戻してから給弾カバーを開きそこに給弾ベルトを載せカバーを閉じれば完了である。
ドットサイト召喚し、M240に付けてあったので、サイトを覗き撃つタイミングを計る……。
リザードマンの兵達はこちらが攻撃を加えてこないことを確認したのか、偵察部隊の中から連絡員と思われる兵を本隊がいる方向に出し、本隊との合流を図った。
その後本隊とは10分ほどで合流し、まるでよく訓練された軍隊のように隊列を整えこちらへと進軍を始めた。
「敵襲」との声からしばらくして、リザードマン達との距離は300mぐらいになったころ。敵はこちらを威嚇するためか横一列に並び、雄叫びを上げながら行軍してくる。
俺とベル、シルヴィアは再度銃を点検した後、緊張した面持ちでドットサイトでリザードマン達を覗き様子を伺う。
「いいか、敵を引きつけてから撃つぞ!俺の射撃の合図と共に全力で撃ち続けろ!」
「「ハイっ!」」
いよいよ敵との距離が200mぐらいになってきたので、先頭のリザードマンの弓兵隊に照準を合わせ射撃を開始した。