283.襲撃3
「……、な、なんだそれは?」
「ご主人様はこの魔法をご存じないのですか?」
「ああ、これまでほとんど魔法に触れてこなかくて。その魔法はなんていう魔法なんだ?」
「これは初級の回復魔法で“リカバリー”というものです。これで簡単な傷ぐらいなら治せてしまうんですよ」
「それはすごいな!ありがとうエレオノーラ」
「いえ、これぐらいなんてことありません。確かこれぐらいの魔法でしたら女王陛下もレナさんも使えるはずですよ?」
「そ、そうなのか」
「今度ワタも少しは魔法について勉強した方がいいかもしれないわね?」
「うん、それには同感だな、これまでこの世界での現代兵器の有用性しか考えてこなかったから、これからは魔法の有用性についても考えてみなくてはね……、それこそ一国の王としてこの世界の常識的なものであるはずのことを知らないのは何かと不味いしな」
「流石は私の旦那様ね!国に帰ったらまた考えましょ?」
「ありがとうメリア!」
この世界に来てから長らく魔法というものに触れてこなかった俺にとってはかなり新鮮だった。
それこそ現代兵器ばかりに頼って来たのでなおさらだ。
メリアの言う通り今後は魔法についてもっと深く考えるべきなのだろう。
それこそ魔術と現代兵器が合わさった兵器等も開発できれば、今後何かがあっても耐えうることが出来るようになるだろう。
そんな話をしていると、治癒魔法を施してもらった隊員の意識がはっきりとしたものに戻って来ていた。
「ううぅ、エレオノーラさん、助かりました」
「いえ、お礼には及びません、ゆっくり休んでください」
エレオノーラによって治療された隊員は、先ほどまでまるで死人のような顔だったが、今ではだいぶ楽な顔をしていた。
ドンッ!ドンッ!ドンッッ!
「今度はなんだ!?」
「ご主人様あれを!」
突然の爆発音が響く。
エレオノーラが指差す方向には俺達が待ちわびていた援軍が向かってくるところだった。
先ほどの爆発音はAH-64Eが放ったハイドラ70ロケット弾によるものだろう。
「やっと来たか」
「ええ、これで心配なくなったわね」
次々にやって来たAH-64Eによる激しい機銃掃射と各種武装の射撃が始まった。
そのおかげで敵の攻撃は完全に沈黙していた。
ある程度AH-64E隊が撃ち終わると、その後ろからやって来たヘリに乗って来た隊員たちが次々と降りていた。
これで完全に形勢逆転した。
その後援軍に駆け付けた第一海兵連隊一個中隊が機銃掃射から生きながらえた敵の掃討作戦を開始。
こちら側の猛攻に耐えられなくなった生き残った敵はこちらに手を上げ降伏してくる。
その敵を尋問してわかったことは、彼らはこの周辺を荒らしまわっていた山賊なのだという。
彼らがこんな重武装でいたのは、時折ここを通る遠城帝側の兵達から盗んでいたためである。
とは言え、現代兵器によって武装したこちら側を一時的とはいえ圧倒するほどの火力を持つものがこの国内にはいると思うと、今後のこちらのとる作戦を変えなければならない。
正直この襲撃があるまで、もしこちらが襲われたとしても槍や刀を持った連中しか来ないだろうと高を括っていた。
結局この襲撃によってこちら側は軽傷者5名、重傷者4名と大きな損害を被っていた。
幸いなことにエレオノーラやレナによる簡単な回復魔法によって軽傷者は完治し4名の重傷者は応急処置を施された上海兵遠征軍本部にある野戦病院へと護送されていった。
そしてすべての処理が完了すると車列は、再びゆっくりと目的地に進み始めていた。




