275.エレオノーラ2
奴隷商から彼女についての情報を聞き出すと、案外あっさりとベラベラしゃべってくれた。
彼女の名前はエレオノーラといって、奴隷になる前は冒険者として一人で帝国領内を旅していたという。
種族はエルフで年は2500歳 、コンダート王国のガレアから北西部の山奥にあるエルフの里の出身でそのエルフの村は戦士を輩出しているのだという。
実力はなかなかのもので、全系統の魔法が使えさらに剣術にも長け、その強さをこれまで戦ってきた凶悪な大型モンスターや一騎打ちを申し込んできた名の知れた騎士等に遺憾なく発揮し、それらをいとも簡単に退けて来たのだという。
そんな彼女の武勇伝は帝国では有名だ。
そんな実力を持った彼女がどうして奴隷の身にやつしたのか。
それは彼女が宿で寝静まり完全に無防備な状態のときに、奴隷ハンターと呼ばれる犯罪グループによって隷属魔法をかけられそのまま連れ去られたからだ。
その話を聞いて、俺は自国民をこんなところまで連れてきて平気な顔をして奴隷として売っていることに激しい怒りを覚えたが、ここで暴れて自分の正体をさらすわけにはいかないので、ぐっとこらえる。
むしろここでエレオノーラを救えたことに満足すべきだろう。
話を聞き終わり軽く礼を言うと、俺は奴隷商人からエレオノーラが持っていた装備品や持ち物一式を渡された。
その中には、よく切れそうな白い柄の両刃の剣やオリハルコンで出来たラウンドシールドが入っていて、さらに持ち物の中には“帝国の地図”が入っていた。
「いいのか?これをもらって?」
「ああ、そういうのは俺ら興味ないからな、持っていけ」
「防具はこれだけか?」
「ああ、元々こいつは薄くてエロい服しか来てなかったからな、それ以外は何もないぞ」
装備品と持ち物を受け取った俺は早速彼女の元へと向かう。
檻の中に入れられている彼女の服はボロボロでいたるところが見えてしまっている。
このままではかわいそうだと思った俺は、白いフリルのついたワンピースを召喚して彼女に渡してあげようとした。
「ほら、これを着なよ?もう大丈夫だから、おいで?乱暴はしないよ?」
それでも彼女は警戒して出てこない、ここまで来るまで余程ひどいことをされてきたのだろう。
よく見れば、足や腕に鞭で打たれたような跡が残っていた。
「そこにいては何も変わらないよ?ほら!」
俺は手を伸ばし彼女を引っ張り出そうとすると、その手を彼女は思いっきり叩き、頑として出てこなかった。
その瞬間彼女の全身に青白い電撃が走る。
電撃を受けた彼女は身をよじり、苦悶の表情でうめき声を上げた。
「ううっ!ぐああぁっ!」
(今のが命令を無視したときに発動する電撃か……)
無理やり出すのが無理だと悟った俺は、檻に入り彼女を優しく抱きしめた。
抱きしめられた彼女は、安心したのかすすり泣き始めた。
「大丈夫、本当に君に乱暴しないから、ね?」
「……、ううっ!はい」
俺は一先ず、泣いている彼女が落ち着くまで背中や頭を優しくなでてあげていた。
しばらくして彼女が泣き止んでくれたので、俺は首輪と手枷と足枷を外し、解放してあげた。
「ほら、そのままだとよくないからこの服を着てごらん?俺は後ろ向いてるから」
「……、はい、では」
俺の説得に折れた彼女は、さっき召喚した白いワンピースを着てくれた。
「うん、すごく似合ってるよ!可愛いよ!」
「あ、ありがとうございます、ご主人様はお優しい方なのですね。素敵な方にあえてとても安心しました。これからもどうぞよろしくお願いします」
「いいえ、こちらこそ。さぁ、行こうか?」
「はい!ご主人様!」
彼女が檻から出る時、今までの暗い表情からうって変わって明るい表情へと変化していた。
そして無事彼女を助けた俺は、大和城へと引き返していった。




