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268.遠城帝

 

 ちょっぴりカオスな夜が明け、次の朝。


 俺とメリアは、大和城本丸御殿の中に用意された広さ6畳ほどの和室にいた。

 この和室も元居た世界の日本と全く同じ感じで、障子で仕切られた部屋の床はイグサで出来た畳、そして床の間には山水画の掛け軸がかけられ、その下には白百合が生けられていた。


 昨晩この部屋に来て真っ先に俺が感じたことは、まるで田舎のおばあちゃんの家に来たかのような懐かしさと心地よさだ。

 そう思えたのは、独特な畳のにおいと白百合から香る匂いがそうさせているのだろう。


 その和室で二人はとなり合わせで、城の調理場から運ばれてきた朝食をとっていた。

 朝食はお膳に載せられ、そこには玄米入りのご飯と見た目がサバとそっくりな焼き魚があった、この魚は近くの港でとれたもので毎朝献上品として送られてくるのだという。

 そして副菜には、大根の浅漬けが添えられ、汁物には西から送られてきた赤みそと近くの海岸でとれた海藻の味噌汁が出て来た。


 見た目は何とも質素な感じで、これまでの王宮での食事を想像していたメリアにとっては少々物足りない様子だったが、俺にとってはむしろこういった食事の方が大変ありがたく感じる。


「見た目はなんだがパっとしないし、見たことのないものだらけだけど、おいしいわね」


 メリアはなんだかんだブツブツ言いながらも、味は好みだったようで、盛り付けてあったものがどんどん減っていく。


「まぁ、そういうなって。俺はこれが出てきて凄く嬉しいんだぞ?」

「確か、もとの世界のワタの住んでた場所ではこういったものがよく出るんだったわよね?」

「よく出る……、というより、古くからある伝統的な料理といった方がいいかな?」

「ふ~ん、そんなもんなのね」

「なんだよ、興味ないなら話さないよ?」


 そんなメリアの興味なさそうな返事に、俺は少し拗ねてしまう。


「ごめん、ごめん。もっと話して!二人きりで話したり、食事しているだけでも私は幸せなんだから!」


 拗ねた俺を見て焦ったメリアは、持っていた箸とお椀を置き俺の腕に抱きつき、上目遣いで「許して」と訴えるように見つめていた。


 俺はそんなメリアの愛らしい訴えに勝てるわけもなく、あっけなく彼女を許した。


「そっか、わかったよ」

「ウフフ!ありがと!」


 その後しばらく、このゆったりとした空間で二人は仲良く食事をとった。


「失礼します、お食事が終わりましたら、天守閣までお越しください、帝様がお待ちです」


 食事をとり終わり、ゆったりと緑茶を飲んでいると、ふすまがゆっくりと空き、空いた隙間からレナがそう告げてきた。


 レナはこの国に溶け込む為なのか、今まで着ていた戦闘服から着物の一種である“色留袖”に着替えていた。

 見た目は着物を着て周りに溶け込んでいるとはいえ、護身用に持っているVP9だけは左脇の帯にホルスタとともに差していた。


「わかった、すぐ行く」


 いよいよ、今回の大きな目的である遠城帝との会談である。




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