267.大和(だいわ)城
時は少し戻り大和城天守閣の最上階。
大和の城下町のみならず、縦須賀港までを見渡すことが出来る
そこからものすごい数の大きな船が入ってくると事を眺めている人物がいた。
その人物の名は、遠城司といい、彼はこの国で遠城帝と呼ばれている。
彼の隣には正室の菊姫が寄り添うようにして立っていた。
「あれが、彼の国の船なのか?」
「ええ、左様にございます」
「まるで島みたいだな」
「ええ、あれと比べて我が方の船がまるで豆粒のようです」
「あんなものを持っている国が敵でなくてよかった……、あれが攻めて来たとなればたちまちこの町は火の海だろう」
この時遠城帝はコンダート王国の使節団を乗せた強大で大量の船団を目にし、とても出雲国が総力をかけても勝てない相手だと悟った。
襲撃後は何事もなく、無事大和城大手門についた第一武装偵察大隊の面々は、その大きな城に釘付けになっていた。
この国の政治の中心としても機能している大和城は小高い丘のような場所に建っており、城下町と接する部分には川を利用した深く幅広い外堀があり、その内側には4メートルもある白い壁の城壁、そしてその内側の少し高くなった場所にはもう一つ城壁があり、またさらにその奥にも城壁があり非常に堅牢なつくりになっているのが見て取れる、そしてその頂上にはこれまた白い壁の色の天守閣がそびえたっていた。
そんな大和城を横目に大隊長は、国王陛下を乗せたヘリが止まれるような広場を探していた。
ただ、城を一周しても広場を見つけられなかった大隊長は、十史郎に城の中に広場はないかと問う。
「うむ、恐らく練兵場ならかなりの広さがあるが……、何に使うのだ?」
「悪いようにはしないさ、ともかくそこを使わせてもらえるか聞いてきてくれないか?」
「合点承知、お任せを、では」
しばらくすると、城門から走ってこちらに向かってくる十史郎の姿が見えた。
手を振ってこちらに向かってくるあたりから、どうやら許可を取り付けられたようだ。
「良し、どうやら中にランディングポイントを抑えることが出来たようだな、しかし……」
十史郎の様子を見て一安心した大隊長であったが、いざ城に入ろうと考えたとき、城に入るための橋は全て木造なので装甲車両が通ることが難しそうという問題点が浮かび上がった。
「大隊長殿!一度AAVで通れるかやってみましたが、1mも進まないうちに橋がきしみはじめまして……」
「そうか、やはり無理か……、しょうがない一先ず第二中隊の降車戦闘班のみ徒歩にて入場しランディングポイント確保にあたれ、他は別命あるまで待機!」
「「「「了解!」」」」
その大隊長の号令のもと、各車両から降りた隊員たちは十史郎を先頭にして次々に大和城への入城を開始した。
「副大隊長、ここをまかせていいか?中を見てくる」
「はっ、お任せください」
大隊長も城の中を確認するために、副大隊長に城外の部隊の一時的な指揮を預け自身も城の中へと入っていった。
入ってすぐに練兵場と呼ばれる城内を守る兵の訓練の為に使っている、ある種運動場のようなところがあった。
それを見た大隊長は、MV-22が着陸できそうだと判断し、本部へとランディングポイント確保の連絡を入れていた。
縦須賀港沖、強襲揚陸艦「キアサージ」
第一武装偵察大隊が上陸してからおよそ6時間後。
すでに日は落ち、あたりはだんだんと闇に飲まれ始めていた。
そして、ワタとメリア、レナの三人とその護衛達は、ようやく届いたランディングポイント確保の報を受けMV-22に乗り込み発艦していた。
「ようやくだな」
「しょうがないわ、安全第一で行かなくてはワタの命が危険にさらされてしまうわ」
「そうだな、しかし、これでは暗くて何も見えないな……」
待ちに待った元居た世界の日本の江戸時代と似た場所に行けると楽しみにしていた俺は、予想以上に待たされ少し不満だった。
しかし、メリアが言う通り安全が確保されない限り、国王がそうやすやすと行けるはずもないのだ。
そういった指摘に少しムッとなった俺は少しでも気晴らしになればと、機上から眼下にあるはずの街並みや景色を見ようとしていた。
しかし、コンダート王国内とは違って明かりはほとんどなく、暗闇に支配されていた。
キアサージから飛び立ってから数分後、第一武装偵察大隊が確保してくれた大和城内のランディングポイントに着陸した。
「両陛下、お待ちしておりました!宿舎を用意しておりますので今夜はそちらにお泊り下さい!」
MV-22から降りたった俺たちは、第一海兵隊遠征軍司令官デクト・レノア海兵隊大将の出迎えを受けた。
そして、彼女がすぐに俺とメリア・レナをすぐに宿舎へ案内したのは、夜も遅く遠城帝も長旅で疲れたであろうとの気遣いもあって、明日に日を改めて会談しようという話になったからだ。
「出迎えご苦労レノア大将、ヴィアラはもう宿舎に?」
「はっ!ヴィアラ閣下はすでにミサ閣下とともにご夕食をとられています」
「そうか、わかったわ、ちなみに今日の夕食はなに?」
「はぁ、それがカレーだそうで……」
その言葉に俺とメリアは顔を見合わせ、ため息をついていた。
ミサ+カレーとなれば、今どんな状態なのかあらかた予想がつく。
レナは何のことかさっぱりという感じであったが、俺とメリアの反応を見てあまりよくないことが起きているのだろうと判断していた。
「は~、そういうことか……、わかった、では行くとしよう」
「そうね、私もカレーが食べたくなったし、レノアも来るでしょ?」
「はっ!ではお言葉に甘えさせていただきます」
こうして俺たちは、少しばかり荒れた宿舎へと足を運ぶのであった。




