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259.琴音と信子の思い

 

 キアサージ艦内へと入った俺と琴音は、メリアと連合艦隊首脳たちが待つ会議室へと向かっていった。

 会議室に向かう途中、琴音の側近が気になっていた。


 何故気になっていたのかというのは、その目立つ朱色の鞘の脇差がかっこよくつい目が行ってしまっているということもあるが、それに加えて、彼女の背中には折りたたまれたドラゴンの翼のようなものが生え、額には小さく金色の角が生えていたからだ。


 正直な話、それ以外にも、具足の胴上部を大きく膨らませている大きな胸と、まるで絹のようにさらさらとした白い髪に見とれてもいた。

 後から聞いた話だが、彼女は出雲国に古くから存在する龍人族の出身だそうで、龍人族は高い魔力とそれを用いた高い戦闘力が特徴で、身体的には彼女のように人にきわめて近い特徴の一族もいれば龍の全身がうろこに覆われた姿をした一族などが存在している。


 そしてこの龍人の側近の名前は館浜信子といって、彼女は肩書としては側近(副官)となっているが、実は琴姫の養女で、琴音が自ら跡継ぎとして連れて来たのだという。

 それも、臣下に何度も縁談を勧められたことに嫌気がさし、その対抗策として無理やりとったものだ。




「何か私めに御用でしょうか?」

「い、いや、なんでもない」

「左様でございますか」


 そんな俺の視線に気づいた信子は静かに、しかし鋭い声で俺に向かって声を発していた、その見つめる赤い目はまるで狙いを定める鷲のように鋭く見ていた。


「これ、信子!不敬であろう、静まれ」

「はっ!」

「国王陛下、どうかこの娘の無礼をお許しください、この娘は決して悪い娘ではないので」

「ああ、大丈夫だ問題ない……、それより着いたぞ」


 琴音に信子のことを謝罪されたが、むしろ俺が悪いのだといえないまま会議室についてしまった。


「さぁ、どうぞ」

「失礼します!」


 会議室に入り、琴音たちは用意された長机へと案内され腰かけた。

 腰をかけたのを見届けたメリアや各首脳陣は彼女たちへと近づき握手を求める。


「琴音さん、私はコンダート王国女王のメリアよ、よく数が劣勢の中帝国と勇敢に戦ったわ!これからは私たちもともに戦えると思うからよろしくね!」


「女王陛下、お招きいただき感謝する、あなた方に救われ本当に感謝している、本当にありがとう」


「いいのよ!とりあえず今日はここで話した後この艦でゆっくりしていってね!」


「本当に何から何まで……、痛み入る」


「ようこそおいで下さいました、私はここにいる全艦隊の指揮を執っているガンダルシア・ヴィアラです、本国では海軍大臣も勤めています、同じ海の人間として今後ともよろしくお願いいたします」


「おお、これほどの方が出雲国まではるばるといらしてくれたとは感激だ、こちらこそよろしく頼む」


 そして、琴音たちは、その部屋に琴音達にとってなじみ深い顔ぶれがいることに気付いた。

 そこにいたのは千代姫の側近や護衛達であった。


「千代姫様は何処に?!」


 ただ、そこには肝心な千代姫の姿がなかった。


「ああ、彼女は船酔いで体調を少し崩してしまったようで、医務室で休んでいるよ」

「そ、そうなのか」

「ただ、安心してくれ、彼女は無事だから」




 しばらくして、メリアや首脳陣たちとの挨拶が終わり、メリアは琴音から気になっていたことを聞くことにした。


「まずは、琴音率いる艦隊がこの海域に出て来た経緯を聞いてもいい?」


「ああ、当初は帝国海軍第七艦隊との交戦ではなく南部方面への増援として向かう手はずだった。しかし、出港から2日後に近海に帝国艦艇が発見され、我らは遠城帝が危ないと判断しすぐに交戦することにしたんだ、とはいうもののほぼ無策で突撃した我らは、帝国の思うようにされご覧の通りボロボロにされてしまった、本当に不甲斐ない。そして、もはやこれまでというときに貴軍が現れ我らを助けてくれた、といったところか」


「そういえば、こちらの情報部も出雲国南部海域に出没する帝国海軍艦艇の動きを察知していて、すでに大方の勢力もわかっていたはずよ」

「それはまことか!?」


 さらりと自国でも把握しきれていない情報を、他国の女王に言われたことに琴音は大いに驚いた。

 そんな驚いている琴音に、追い打ちをかけるかのようにヴィアラは手元にあった資料を見ながら淡々と伝えていた。


「ええ、確かにこれは空軍情報局からの情報ですが、出雲から見て南方海域に二つの大きな艦隊がいるという情報と航空写真を得ています」


「そ、そんなことまで、ご存じとは恐れ入った、他には何か情報は?」


 さらに自分たちの知らない情報が出て来たので、もっと情報を得ようとした琴音は机に身を乗り出すような恰好でヴィアラを問いただそうとした。


「悪いけど、これ以上は条約を結んでからにしましょうか?」

「ぐぬぬ、わかり申した」


 しかし、易々と大切な情報をいくら助けようとしている国であったとしても譲るはずもなく、メリアはそんな琴音に少し冷たく言った。


 言われた琴音は、メリアの正論に何も言えず、本当は喉から手が出るほど欲しい情報だがこれからの関係を崩したくないと考えた結果、抵抗はせず大人しくすることを選んだ。


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