245.動く無人島
艦橋についた俺は早速艦長から報告を受けた。
「何があった?」
「2時の方向に島影らしきものを発見したので、報告をと思いまして」
「大きさは?」
「いえ、まだわかっていません」
「そこは、わかってから報告しようよ?」
「し、失礼しました」
俺はそこで、急いできた割に些細な報告であったことに少し苛立ちを見せてしまっていた。
「まぁ、まぁ、いいじゃない、新たな島の発見なんだから、たとえそれが些細な報告だとしてもいいじゃない」
そんな状況を見たメリアは艦長にフォローを入れつつ、俺のことをなだめてくれた。
「そ、そうだな、すまん、艦長」
「い、いえ」
「島の詳細を調査するために、空母から戦闘機を発艦させて偵察してもらおう、空母アメリカに打電、戦闘機を前方の島らしき場所に向けて発艦させろと」
「打電します!」
一先ず調査をしてもらうために、アメリカから戦闘機を発艦させ低空飛行で偵察してもらうことにした。
それからしばらくして、島らしき場所に到着した戦闘機隊から情報が送られてきた。
島の形状は綺麗な円形をしており、島内のほどんどに木々が生い茂っているようだが、人が住んでいる痕跡は上空からは見られなかった。
そして中でも特徴的だったのは、まるで針のように隆起した薄水色の地形が多くみられるということだった。
島の広さは直径1900m程で全周囲が砂浜になっている。
「という報告が上がって来たようですが、いかがいたしましょうか?連合艦隊司令長官は調査の必要ありとおっしゃっていますが?」
「そうだな、新たな島となれば調査の必要があるからな!そうしたら、この艦に乗っている彼らを行かせようか、グレン行けるか?」
「はっ!陛下の御命令であればいつでも」
「良し頼んだ、出撃させる部隊は一先ず一個中隊でいいだろう、初の出撃だが戦闘になることはないだろうから、少し気楽にな?」
「ありがとうございます、では行ってまいります!」
俺は早速この艦に乗っている海兵隊武装偵察連隊の一個中隊を出撃させることにした。
命令を受けてからすぐに彼らは艦上にすぐに出撃できるように準備していたMV-22オスプレイに乗り込み、出発準備が整った機体から続々と発艦していった。
海兵隊員たちが乗り込んでいるMV-22オスプレイは海兵隊使用のV-22オスプレイ、このオスプレイの特徴は回転翼の角度を変更することができるティルトローター方式を採用していることだ、この方式をとることによって飛行中でも固定翼機とヘリコプターの特性を切り替えることができる(垂直離着陸機)。
この特徴は従来のヘリコプターに比べて高速で航続距離に勝り、固定翼機にはできない垂直離着陸や空中停止ができるという、まさに両方のいいとこどりをした機体になっている。
MV-22オスプレイで島の浜辺に降り立った隊員たちは、人の影が全くないこの島に何とも言えない不気味さを感じていた。
到着した隊員たちは初任務ということもあって緊張気味ではあるが、訓練通り敵からの不意の攻撃から身を守るため、到着後開けて遮蔽物のない浜辺から森へと駆け足で向かっていた。
攻撃は今のところはないが、隊員たちは分隊ごとに分かれ木や岩に身を隠しながら、ごつごつとした足場の悪い岩や砂利の中慎重に歩みを進めていった。
森を歩いていると、そこかしこにみたことのない植物が生えていた。
「中隊長!森に入った隊員たちから何やら見慣れぬ植物を多数確認したと報告が」
「何?どんな植物だ?」
「それが、まるで海藻のようだという報告が上がってきていまして」
「島の上なのに、海藻が……、どういうことだ」
森を隊員たちはくまなく探索するが、そこにあるのは地上に生えている植物のような海藻かゴロゴロと転がる岩しかない。
それでもめげずに隊員たちは探索するが、人も動物も見当たらないことに徐々に恐怖感に似たものを覚え始めていた。
そんな不気味な森を探索している途中、とある分隊の隊員が小さい池のような場所で足を止めた。
「おい、見てみろよ」
「なんで、こんなところに……、結構森の奥深くに入って来たというのに」
水たまりは海岸からかなり離れている場所で発見されたが、そこには浅瀬などにいるフナムシやイソギンチャクや小魚がいた。
「まさかとは思うが……」
もしかしたらこれは海水ではないかと思った一人の隊員は、危険を覚悟で試しにその水を舐めてみるとしょっぱかった。
「うん、しょっぱいな……」
どうやらこれは海水のようだ。




