244.海兵隊艦上射撃訓練
「ちょ、ちょっとワタ!」
「ごめん、メリア、行ってくる!」
「もう、ワタったら……、まぁ、いいわ」
早速下に降りていった俺たちは訓練が行われているエレベータへと向かった。
そのエレベータの上では海側に用意された的に向かってHK416A6とM45A1による射撃訓練を行っていた。
射撃の途中にトランジション(このこと場には二つの意味があり、一つは銃を左右どちらかの手に切り替えること、二つ目は、メインウェポン(アサルトライフル)からセカンダリウェポン(ハンドガン)に切り替えること、今回はこの両方の意味)やスピードリロードの訓練もしていた。
訓練の教官役にはミレイユ(海兵隊大佐)やシルヴィア、キューレ、エレザ(海兵隊大佐)がいた。
エレザとミレイユには今後も海兵隊の訓練についてもらうことになったのだが、二人はこれまで冒険者ギルドでの活動が主で、当然ながら軍務にはついていなかった、しかし、それでは管理上問題が出てくるので二人には大佐の階級を付与した。
シルヴィアとキューレたちは射撃訓練には参加せず各種銃の分解整備の仕方の説明、手が空いた時には射撃訓練で使う弾薬の補充などといったサポート役として参加していた。
「ミレイユ、エレザ、ちょっといい?」
「おお、ワタ、どうした?訓練を見に来たんじゃないのか?」
「……、邪魔」
「そうなんだけど、俺も一緒に参加していい?」
「それはいいが、ワタなら訓練する必要もないだろう?」
「いや、エレザ俺もしっかり訓練しないと腕がなまるよからさ、だからやらせてよ」
「……、よしわかった、おい!一旦射撃中止!Cease fire!」
俺はエレザに頼んで(というより半ば強引に)腕がなまるからという理由で訓練に参加させてもらうことにした。
エレザは少し間があったが、快諾してくれた。
ミレイユはお姉さまが言うならばみたいな顔をしつつも、俺の持つテクニック的なものを見ようとこちらをじっと見つめて来ていた。
「陛下!お待たせしました、どうぞこちらをお使いください」
「ミセアありがとう!丁度いいタイミングだ!」
これから始めようとしていた時、タイミングよくミセア大佐が俺用の銃を黒いガンケースに入れて持ってきてくれた。
ミセア大佐はちょうど俺たちが着艦したのとほぼ同時に着いていたようだ。
用意してくれた銃はSIG516とSIGP226を撃つことにした。
プレートキャリアやイヤープロテクター等を着け終わり準備ができた俺は、たくさんの海兵隊員の視線が集まる中射撃位置についた。
(やばい、今まで人の目を気にしたことないから、すごく緊張する……)
いつもと違った環境に少し緊張しながら位置についた俺は、まずプレスチェックを行い、セーフティをかける。
SIG516をローレディで構え、エレザの合図を待つ。
「Stand by! Target!」
その合図を聞いた俺は的に向かって歩みを進める。
SIG516でセミオート5発、5発撃ったらセーフティーをかけてすぐに背中にSIG516を回し、ホルスターからSIGP226を抜いて持ち替えダブルタップ、撃ち終わったら一旦停止して再びSIG516に持ち替え、そしてまた的の手前まで着くまで同じことを繰り返した。
人の目を気にしながらの射撃だったが、ぎこちない動きになることなくむしろ鮮やかに射撃することができた。
周辺にいた隊員たちは何やらメモを取っているものや、隊員同士で意見を交わしている様子が見られた。
どうやら少しは俺の射撃も隊員たちになんらかの影響を与えられたらしい。
俺は撃ち終わると銃に弾が入っていないことをスライドやチャージングハンドルを引いて確認し、両方を安全状態にした。
的を見ると見事に頭部に全弾命中していた。
「流石だな!ワタ!」
俺が的をじっと見ていると、後ろからエレザが声を掛けてきた。
「止まってる的なら簡単に当てられるさ!」
「流石は実戦も経験している方は違いますね!」
「ん?君は?」
エレザとは反対の方向から声がしたので、そちら側に向き直るとそこには小柄な赤毛の女性海兵隊員が立っていた。
「し、失礼しました!私海兵隊武装偵察連隊第一大隊長のアリス中佐と申します!」
「アリスか、君も訓練に?」
「いえ、私の大隊はすでに訓練は終わっていますので、私が個人的に見学に来ておりました」
「そうか、でもそんなに学ぶこともなかっただろう?」
「いえ、私からしたらすべてが新鮮でとても刺激的なものでした!」
「そうか、それならよかった、何か質問とかある?……って、何!」
学ぶ意欲のあるアリスに何か教えられることがあればと思って、何か知りたいことがないか聞こうとした瞬間、俺はものすごい勢いで後ろに引っ張られた。
俺は引っ張られ頭に何か柔らかい感触を感じ、何かと思ってみるとそこにはミレイユの顔があった。
どうやら俺はミレイユの柔らかな胸に頭を預けるような体勢になっているようだ。
「……、報告来てる」
「お、おう、わかった」
「……、また増やす気?」
「な、何のことだ?」
俺はすぐにはミレイユの言ったその意味を理解できなかったが、彼女のむくれた顔から何となく察した。
「陛下!すぐに艦橋にお戻りください!」
「すぐ行く!……、ミレイユ離してくれない?」
「……、ん」
ミセア大佐からも艦橋に来るように促された俺は、ミレイユから解放してもらい足早に艦橋へと向かった。




