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236.後宮での夜2


 エリサはまだ不安がぬぐえない様子だったが、そんなことよりおなかが減ってしょうがない俺は食べることにした。


 食べる時には、盛られた取り皿とは別に用意されている小皿に入ったポン酢につけて食べるようになっている。

 水炊き鍋といったらほとんどの人がポン酢をつけて食べるだろう。

 中には醤油で食べたり、そもそも小皿なんか用意しないでそのまま取り皿に乗った具材に直接かける人もいそうだが。


 エリサは食べていくうちにさっきまでの不安がなくなったようで、今では美味しそうに食べていた。

 アリサはエリサと違って表に出さなかったが、彼女もどうやら未知の食べ物に対して抵抗感があったようで、特にタラバガニを食べる時には、ちょびちょびと前歯だけでかじって食べていたが、今ではローザと競い合うように食べている。


 気付けば鍋に入っていた具材はなくなり、残っているのは具材の味がしみ込んだおいしい出汁だけだ。


「メイド長!お替り!もっとカニもってきて!」

「申し訳ございませんローザ様、もうすでに在庫が切れてしまっておりまして……」

「何よ!こうなることも想像できなかったの!?」

「いえ、そういうわけでは……」

「とりあえず料理長呼んで!……イタッ!」


 ローザはタラバガニを余程気に入ったらしく、もうないとエミリアに言われたとたん、そういう彼女に対してまるで飲食店でたまにいるわがままなお客さんのように怒鳴っていた。

(昔こんなお客さんいたなぁ……料理長呼んだってなにも解決しないんだけどなぁ……)


 このまま放っておけばさらにヒートアップしそうだと判断したメリアは、ローザの後頭部に軽くチョップを喰らわせていた。


「お黙り!せっかくみんな楽しくで食べている夕食が台無しになるでしょ?」

「ごめんなさい……でも、おいしかったんだもん」


 流石にメリアに窘められたローザは、メリアには勝てないと悟ったのか急に大人しくなっていた。


「それが聞けてうれしいよローザ、今度また食べような!次はこれと違った食べ方があるからそれで食べてみようよ?」

「えっ!ほんとに!やったーー!流石は私の旦那様!大好きーー」

「え、ちょ、ま」


 俺のその言葉にローザは一瞬にして元気になり、すごい勢いで俺に抱きついてきていた。


「(なによ、いい気になっちゃって、私にもそういってほしいのに!)」

「ん?メリアなんか言った?」

「なんでもありません!そんなことよりエミリア、この後に“しめ”ってものが用意されているって聞いたけど?」

「はい、最後は“しめ”にうどんを用意しております」


 最後に鍋に残った汁の中にうどんを入れて食べることにした。

 鍋のしめにはうどんを入れて食べる派か、ご飯と卵等を入れて雑炊にする派がいると思うが、俺は断然うどん派だ。

 流石にうどんだけでは足らないので、薄く輪切りにしたネギとわかめを入れて食べることにした。


 これにもみんな満足してくれたようで、一様に幸せそうな顔をしていた。


「は~~食った食った、ごちそうさまでした。みんな満足できた?」

「ワタ様最初あんなに疑ってすみませんでした、まさかこんなにもおいしいものだったとは思わなくて……」

「いいんだよエリサ、おいしかったならそれはそれでよかったじゃない、それにそんなに謝らなくていいんだよ?」

「ワタ様はお優しいんですね、そんなワタ様のお嫁さんになれると思うと本当に幸せ者だと思います」

「そうか?そんなに優しいのかなぁ?まぁ、でも、これからもよろしくな?」

「ハイ!もちろんです!どこまでもお供します!たとえそれがこの世界じゃなくても、地獄へでも」


「何よ!私だって旦那様……、もとい未来の旦那様と一緒だったら死んでもついていくわ!」


「みんなありがとう!うれしいよ……、さて、食べ終わったことだし、軽く一杯飲もうか、エミリア例のものを」

「かしこまりました」


 俺がエミリアに頼んで持ってきてもらったのは、日本酒の中で俺の中で一二を争うほど大好きな上善如水(純米大吟醸)を用意してもらった。

 その日本酒を大き目のお猪口に注いでもらった。

 この日本酒を飲むことが待ちきれなかった俺は、目の前にお猪口を持ってきてもらった瞬間すぐにそれに口をつけていた。


「プハー、うまい!もう一杯!」

「かしこまりました」


 俺はそのお猪口に注がれたものを一気に飲み干していた。

 そうかと思えば自然に俺はお替りをエミリアに要求していた。


 そうして注いでもらったお酒もアッという間に飲んでしまっていた。

 というのもこのお酒は前にも言ったように、読んで字の如く水のように飲めてしまう。

 そして甘くふわっと広がる香りがまたいい。


 しかも、これと一緒に出されてきた塩辛と一緒に飲むと最高にあう(のは俺だけだろうか?)


「これ、おいしいわね!」

「よかった!このお酒好きなんだよね!メリアが喜んでくれてうれしいよ!」


 その後みんなで酒を飲みながら、いろいろな話で盛り上がっていた――――。

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