235.後宮での夜
大広間にレナと一緒に行くと、そこにはすでにメリアやアリサ・エリサ・ローザたちが集まっていた。
大広間の真ん中に用意された机の上に用意されていたのは、大きな土鍋で作った水炊きだった。
具は水菜、白菜、ニンジン、むきエビ(車エビ)、タラバガニ、春菊、シイタケ、鳥肉団子、白滝とバリエーション富んでいた。
さらに万が一メリア含めここの世界の住人達の口に合わなかったときの為に、こちらの世界の菜葉類も入っていた。
「おおっ!今晩は水炊き鍋か!久しぶりだな~」
「入っている具材も家庭にもよるでしょうけど、結構ポピュラーなものが多いですね!」
「特に水菜は俺的にポイント高いかな!」
「私もそれは大いに賛成です!」
「そして、鍋の中で一際目立つタラバガニの足!これはもう最高の一言だね!」
「タラバガニをこっちでも食べられるとは夢にも思いませんでした!もうよだれが止まりま……、ジュルリ」
俺とレナは久々に見た水炊き鍋を見て感動と同時に興奮のようなものさえ覚えていた。
それもそのはずで、鍋の3分の1を占めるほどのタラバガニが入っていたからだ。
その光景にレナは思わず口角が緩み、今にもよだれが垂れそうだった。
「ワタ様、どれがそのタラバガニというものなのですか?」
エリサは俺に彼女にとって、というよりレナと俺以外みんなにとって、未知の食材のタラバガニついて恐る恐るだが好奇心も含まれたまなざしで聞いてきた。
「ここにある赤くて細長いものがそうだよ!」
「これってそんなにおいしいんですか?」
「ああ、おいしいとも!うまく説明できないけど、食べたとたんふわっとした触感とかすかな甘みが口の中にいっぱい広がる感じだぞ」
「こんな棒みたいなものが……、甘い、ですか……、」
「まぁまぁ、百聞は一見にしかずってことで食べてみてよ!」
やはり俺の説明を聞いても未知のものに対して(しかも足ときた)、エリサから恐怖心のようなものは取り除かれなかった様子で、タラバガニに疑いのまなざしを向け続けていた。
よく考えてみたら、いきなり外国人からいくら「おいしいからこれ食べてみて!」って言われて、自分の知らない食材が出てきたら戸惑いを隠せないのは当然だろう、しかもエリサからしたら“何かの足”と聞けばなおさらだろう。
「そうよ、エリサ、ワタの言う通り一先ず食べてみましょ、一応私たちの知る野菜も入っているようだし!」
エリサに向かってそういったメリアだったが、俺にはその言葉はとりあえず食べてみてからものを言いなさいというより、早く食べたいから黙ってという意味が込められているように思える。
「ねぇ、そんなのどうでもいいから早く食べない?私気になってしょうがないんだけど」
一方ローザはエリサとは対極的で、何はともあれそんなおいしいものがあるなら早く食わせろと言わんばかりにこちらに向かって叫ぶ勢いでそう言ってきていた。
その鍋を半円状に取り囲むようにして座っていた俺たちの目の前には、続々とメイドの手によって沢山具材がのせられた皿が出してくれていた。
半円状に取り囲んでいるのには理由があって、鍋から皿にメイドが移してくれるようになっているからだ。
皿にお玉を使って移してくれているのはメイド長のエミリアだ(海軍大佐で戦艦武蔵艦長のエミリアとは別人)。
「良しじゃあ、食べよーー!いただきます!」
「「「「いただきます!」」」」




