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231.機甲教導師団2


 ここでは他の兵学校や士官学校での教育課程にはない実践的な教育を受けることができるところになっていて、特に戦車部隊や砲兵隊、陸軍航空隊に入るには必ずここで操縦免許を取得してから卒業しなくてはならない。

 これらの卒業した者の多くは卒業した兵科にそのままその兵科の部隊に配属されることが通常だが、卒業後他の兵科の教育も受けることができるようになっている。


 さらにこの教育支援軍の大きな特徴としてあるのが、最新兵器(この世界からして)の試験運用部隊を兼ねていて、現在この教育支援軍ではメルカバMk4、ストライカーMGS等の装甲車両系や、航空機(回転翼に限る)だとAH-64Eアパッチ・ガーディアンやV-22(オスプレイ)の実戦配備に向けての運用試験や乗務員訓練等が教育と同時に行われている。


 そして今回はこの中でも最も気になっていた機甲教導師団第一一大隊の訓練の見学を行う。

 第一機甲教導連隊第一一大隊はすべて10式戦車で構成されていて、トップナンバー部隊ということもあって隊員たちは皆エリートぞろいである。


 そして今日の訓練が実戦配備前の最終試験でもある、この訓練後は各戦車部隊(北部・西部・東部の各方面隊)へと配備され前線に配置されることとなる。

 これは帝国軍の国境付近での動きがまた活発化してきており、それを鎮静化するために戦車部隊を派遣予定であったため、その部隊への応援を兼ねている。



 俺とメリアは訓練場を下に一望できる丘にやって来た。

 そこには戦車軍団長のリレイと近衛第二師団長のミント来ていた。

 この後彼女らの部下となる兵達の実力はどんなものか見に来たというわけだ。


 その二人の後ろに座った俺たちであったが、どうやら彼女たちは戦車についての話で盛り上がっているようで、訓練の最後まで気づかなかった。



 訓練はそのまま総火演のような感じで、丘の下にある平たく広い盆地のような場所からエレトイア山の緩やかに傾斜している場所にある標的(第一(500m)、第二(1000m)、第三(1500m))に向けて射撃を行う。


 訓練が始まると早速射撃位置についた戦車中隊は、10式の十八番ともいえる蛇行しながら射撃を行う「スラローム射撃」を開始した。


「中隊射撃用意!前へ!」


 号令とともに、10式戦車は車体後部から黒煙を出しながら急激にスピードを上げ目標に向けてまっすぐ進んでいく。


「中隊各車、目標第一、弾種徹甲、中隊集中行進射、てっ!」


 ドドドドドドドドドッ!


 一斉に放たれた弾は寸分たがわず目標に命中し、命中した場所からは土煙が上がっていた。


「命中!右へ!同一目標、弾種徹甲、てっ!」


 さらにそのあと右へ回頭し止まることなく次弾を同一目標に向けて撃ちこんでいた。


 ドドドドドドドドドッ!


 今度の射撃も目標にまっすぐ向い、見事に命中。


「命中!撃ち方待て、左へ!」


 さらに今度は左に回頭、この間車体は大きく蛇行しながら動いている中、砲身は高度な射撃管制装置(FCS)によって目標からぶれることなくまっすぐ狙い続けていた。


「目標、第三、弾種榴弾、てっ!……、命中!撃ち方待て、停止用意!とまれ!」


 急激に制動を掛けた10式戦車だが、車体を大きく揺らしながらもピタリとその位置に泊まっていた。


「後進用意!後へ!……、同一目標、中隊後進射、てっ!」


 後進の号令とともに再びエンジンを吹かし黒煙を上げながら急激に後退を開始し、その後進途中にさらに命中弾を目標に向けてはなっていた。


「命中!全目標の全滅を確認、状況終了!」


 短いながらも訓練を終えた戦車中隊は、そのまま訓練場から一列に並び全速力で退場していった。



 この訓練の最中リレイとミントは終始興奮したような様子で楽しんでいて、時折立ち上がり歓声を上げている場面も見られた。


 訓練を見届けた俺たちは二人をよそにそそくさと演習場を後にし、王宮へ帰ることにした。




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