208.寝台特急?でGo!!
後宮を出てすぐのところに、事件後に乗ってきた黒塗りのキャデラックに乗り込み、一行は再びアルダート駅へと向かうことにした。
アルダート駅の城門前広場口に着くとそこはさっきとは違った物々しい雰囲気が漂っていた。
事件直後ということもあって、今もこの周辺では第一種警戒態勢が敷かれたままだ、さらに神経質になっていた鉄道警備局と王立警視庁の首都機動師団第1機動連隊、さらについさっきこちらに帰還してきた近衛軍団第4師団第41連隊が入口付近の一帯を完全封鎖の上警備していた。
そんな中、俺とメリアとローザ、ステラ、エレザ、ミレイユ、シルヴィア、キューレ、ベル、レナ、セレナの計10名でアルダート駅の改札内に入っていった。
改札内に入り丁度大きな新幹線発車標の下にテーシャやエレシア、ヴィアラ、アリサ、エリサ、リレイが待っていた。
どうやら彼女たちも同行するようだ。
聞くところによるとメリアとローザ以外は単に体験乗車ということで乗ってきているようだ。
そして身辺警護としてミスティア隊とエンぺリア王国側の方々を警護する部隊として賓客対応隊(通称ローレライ)も同行している。
この部隊はミスティア隊とは違い後宮に訪問された賓客警護専門部隊で今回はエンぺリア王室の警護につくことになっている。
ぞろぞろとまるで大名行列のようになった俺たち一行は、アルダート駅の3階新幹線ホームの53番線に来ていた。
ここには西国新幹線経由国際連絡線が発着するホームになっている。
そして今回俺らが乗るのは、寝台特急ならぬ寝台車付新幹線N700S2(魔改造後召喚)だ。
何故数ある寝台列車を使わず、わざわざN700Sを改造してまでエンぺリアに向かうかといえば、できる限り早くあちらに向かいたかったのだ。とはいえ、アルダート駅からエンペリア王国の首都ベレカまで3056㎞(参考:東京からマニラ(フィリピン首都)まで約3000㎞)あるため、この魔改造した新幹線であっても約9時間かかる(表定速度340㎞/h)。
だったら航空機を使えばもっと早くて済むじゃないかと思うが、そうなるとエンぺリア王国内に飛行場を建設しなくてはならないし、通過する西部空域は東部航空方面隊の航空機が警戒しているとは言え万全な状態にない。
その理由に加えて、単に夜の列車旅を楽しみたいという小さな俺の願いもある。
今回はこのように新幹線で向かうが、今後は寝台特急を召喚する予定だ。
見た目での変更点は誤乗車を防ぐため朱色の帯が車体側面に塗装されている。
それ以外の主な変更点は(進行方向アルダート方から1号車)、7号車に食堂車、4・5号車は普通車指定席(ノビノビ座席)、8・9・10・11号車に寝台車、12号車はラウンジカーになっていてその前後にシャワー室がついていて(11号車にもシャワー室2つ)、それ以外は普通車指定席になっている。最高速度も380km/hまで向上させ、合わせて起動加速度6.5m/h/sが出るように改造、車体・台車・パンタグラフ強度も上げた、そのほかに全座席の窓ガラスと窓枠を防弾耐魔仕様になっている。
そんな魔改造列車に乗り込んだワタは、一先ず指定された“部屋”へと向かった。
乗降口を入るとすぐ左に自動扉があり、それを進むと人ひとりが通れるだけの通路が左よりにあり右側はすべて客室になっていた。
部屋のドアは自動になっていた。
部屋に入るとそこはサンライズ瀬戸・出雲号のA寝台個室に似たような配置になっていて、ベットは二人が寝れそうな広さがある。
他の同行者たちは、車両に乗り込む前に今まで見たことのないものに対しての驚き、ちょうどお見送りに来ていたアネッサ駅長を質問攻めにしていたようで、ある程度満足した彼女たちは一旦列車に乗り込んだのだが、どうやらあらかじめ決められていた部屋割りが気に入らなかったらしく、ラウンジカーで部屋割りの再編成を行っているようだ。
部屋に入ってしばらくたつと、発車ベルが鳴り、ゆっくりと動き始めていた。
新幹線なのに寝台車がついているというのは違和感しかないが、それでもここは居心地がいい。
一人部屋で息ついた俺は、ユリアが書いてくれた報告書を入口手前にある机で読むことにした。




