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186.カルロゼ防衛作戦

 

 ところ変わってカルロゼの町。


 この町はちょうど北に2万メートル級の山々が連なる東メリアル山脈があり(東メリアル山脈最高峰マトス山は21731m)その向こう側には帝国の領土がある。

 いわば国境の町なのだが、長大な山脈が天然の城壁のような役割をしてくれているおかげで、先の大戦でも今回の戦争でもこの町は帝国からの大規模な攻撃にさらされることなく、この地方の主要産業である酪農業や小麦などの農作物の収穫に営みながら比較的平穏な日々を過ごしていた。


 しかしここ最近になってから、帝国の飛空艇や竜騎兵隊がまるで挑発するかのように飛んでくるようになってきた。

 この間は、ただのちょっかいでは済まされないほどの数の大型飛空艇や竜騎兵が大編隊を組んでやってきたが、最近の国王様に代わってからできた鉄の竜騎兵によって一方的に撃ち落とされていった。

 それで、終わったかと思いきや、今度は信じられないことに帝国軍はこの山をどうやってか超えてきて攻撃してくるらしい。


 そんなことを思いながら、このカルロゼの防衛を任されている守備隊とテトラント城から来た増援部隊を含めた計7千の兵をまとめているエンザ隊長は今だ実感のない中、町の警備状況を見回っていた。

 彼は先の大戦から継続してこの町の警備隊長を任されている超ベテランの兵で、ハミルトンにいる親衛隊隊長のローレンスと同期だそうだ。



 そんな彼は守備隊を正面口に集中させ、一部を町の裏口に配置していた。

 この考えは、この町が攻められたときどう対処すればいいかを想定し練られていた作戦に基づくものだ。

 町の守りは、山側以外を囲うようにUの字状の岩を削ってできた無骨な石垣があり、山側は敵が攻めてこないと考えられているため簡素な木の塀だけで守っている。



「帝国の連中は本当にやってくるのだろうか……、なぁ?」


 エンザは近くにいた側近にそうぼやくと、その側近も帝国が攻めてくることに実感を持っていないので、半笑いだった。


「上層部が張り切りすぎてるだけなんじゃないですか?」

「そうだよな!」

「「ハハハハハッ!」」


 しかし、そんな陽気な空気は伝令が持ってきた情報によって打ち砕かれた。


「報告します!帝国兵がこちら側の山のふもとに現れたとのこと!」

「な、それはほんとか?」

「はっ、確かに!」


 エンザはその報告に一瞬固まったがすぐに冷静になり、指示を飛ばしていた。


「すぐに町の門を閉じろ!これは練習じゃないぞ!!それとふもとの集落を救助するための兵を集めてすぐに行かせろ!」

「「はっ!」」


 その彼の言葉を聞いた兵たちは、慣れない手つきで装備を身に着け、ふらふらと怪しい足取りで持ち場に向かっていた。

 それもそのはずで、今までモンスター退治(小規模)でしか戦ったことのない、いわば平和ボケの兵が主なのでこういう時になると本当に頼りない。



 山側の集落に帝国兵が現れてから3日後の朝、町の山側から離れた位置にある5個の集落がすべて襲われ、燃やされ、そして女子供はすべてさらわれて行ってしまった。

 この時に400名に上る民間人の犠牲を出してしまった。

 それに対して守備隊2000を向かわせたが、帝国の最新兵器の魔術式マスケット銃による攻撃に成す術もなく最初の兵力の8割の1800名が戦死。

 これを聞いたエンザは残る5200名を町に集結させ籠城作戦をとり徹底抗戦をとることにした。


「まさか、帝国が最新兵器を持ってこようとは……これではまるで歯が立たないではないか!」

「情報では今セレンデンスから援軍が続々と向かってきているようですので、ここを耐え忍べばあるいは」

「それは心強いが、それまで耐えられれると思うか?」


 その日の午後には帝国側は正面に2万の兵、裏から2千の兵を配置し町を包囲していた。


 包囲された状態を町の一番高い建物から眺めていたエンザは、あまりの出来事に目を見開きながら棒立ちになっていた。


「もはや、ここまでか……」

「報告!」

「なんだ?」

「帝国側の使者より、大人しく投降せよとのこと」

「なめやがって!その使者は帰ったか?」

「いえ」

「ではこう返せ“くそくらえ”とな」

「は、よろしいのですか?」

「行け!!」


 その時のエンザの顔はまるで鬼や悪魔のような凶悪な顔をしていたとかいないとか、伝令兵はエンザの怒声に飛び上がるように走り去っていった。


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