183.ウルス城奪還作戦終了
ガンテによって自由を奪われていた女性たち13名を救助したレナ、ローザ、ステラと俺たちは、屋上に待機していてくれたヘリに乗り込み前哨基地に帰還した。
ヘリで前哨基地につくと、仁王立ちでヨナが待ち構えていた。
「両陛下?さすがにこの行為はご説明していただかないと納得いきませんが?」
案の定ヘリを無許可で飛ばした上に、国王という立場にありながら、直接戦闘を行った事、無線を無視してしまった事等が重なったことにより、彼女の逆鱗に触れてしまったようで、だいぶご立腹のようだ。
「無許可でヘリを飛ばさせたことは悪いが俺の独断だ、あの状態では屋上にいたレナ達を危険な目に合わせることになっていた、実際は俺らが駆け付けなかったらおそらくレナ達は間違いなく死んでしまってもうこの場には二度と戻ってこれなかった、ただ必要だったとはいえ心配かけたのは申し訳なかった、この通りだ」
そう言って俺は頭を下げた、国王たるものがこんなことをと思うかもしれないが、自分でしたことは自分で責任を取って謝罪すべきところはきちっとけじめをつけるべきだと思ったのがこの行動に現れた。
「私も止めに入らなけらばならない立場にあったのに、一緒になって行ってしまったことは反省しているわ」
メリアもそういう俺と共に頭を下げる。
「両陛下、頭をお上げください。私もつい心配になって感情的になってしまいました、申し訳ございません。この国の王としてこれからも必要とされるお方がここで大怪我を、ましてや命を落とされるわけにはいきませんので。しかし、その身を挺してまで部下を救いに行くそのお心に感服いたします、ありがとうございました」
「いいって、俺も悪かった、それより彼女たちをアルダートの仮設病院に送って色々と検査してやってくれ」
「はっ!直ちに」
部屋から救助された13名の女性たちはこの後、ヘリでアルダート城から少し離れたところにある重病患者を一時的に受け入れられるようにつくった仮設病院に行って、健康状態の検査なり何か病気にかかっていた場合は治療してもらうことにした。
捕まっていた女性たちを病院へ送り届けられるのを見届けた俺とメリアは、特別救出作戦に従事してくれたベル達にしばしの別れを告げ、すぐにセレンデンス基地にヘリで戻り、基地内の空軍司令部に戻っていた。
その後ウルス城内のゾンビは、陸軍特殊部隊がメランオピス隊の救助を完了した後に掃討し完全にいなくなった。
その掃討時に城内や城下町には、まだ麻薬にも呪いにも侵されていない生き残りの兵を200人ほど発見し、そのほとんどがこちらに投降してきたので捕虜としてセレンデンス基地臨時捕虜収容所に収容した。
このウルス城で出た帝国側の死者は、病死も含めると推定5万にも上る。
これは、今までの帝国対王国戦で出た最大の被害になってしまったようだ。
その一方で、ウルス城でのゾンビ騒動によって残念ながら王国側にも少なくない犠牲が出てしまっていた。
特に城の裏口付近にある食堂で待機していたメランオピス隊A大隊に被害が集中していて、死者12名、軽傷者23名となってしまった。
何故ここでの被害が拡大のかといえば、飢えに苦しみ一番下級に位置する兵達が食糧を求めて本能的にやってきたが、そこには食糧はなく、さらに麻薬も摂取していたので思考能力も身体能力も著しく低下していたので身動きも取れなくなり、結果として絶望の中なくなっていった人たちが集まっていたからだ。
そして不幸なことに沢山の帝国兵が亡くなって(仮死状態)いたところに、その場で小休止していたメランオピス隊A大隊に被害が集中したということだ。
悲しいことに、この死者の中にはゾンビに噛みつかれ重傷を負ってしまった兵も含まれていて、その多くが噛まれたことによって自分がゾンビ化するのを恐れ、携行していた銃で頭を撃ち抜き、自ら死を選んだ者たちがいたという悲しいことも起きていた。
ウルス城には今後、元居た守備隊を現代化させ一個歩兵師団に再編成の上、避難先のヴィンセント基地から呼び戻し、東部方面軍司令官であるウルス・リシア大将も帰還することになった。
そして、城下町の除染と除去作業などが終わった後に、ヴィンセントに疎開していた住民を呼び戻すことにした。




