174.帝国首都爆撃
カルロゼ北での空戦後
夜になり、予定通りであれば帝国首都に爆撃機を出撃させ主要基地や政府関連施設を攻撃させていたが、それよりも先にカルロゼの町やセレンデンス基地に近い帝国空軍のレヴァイス空軍基地を攻撃することをその予定にあった部隊に命令を下した。
というのもレヴァイス空軍基地は単に近くにあるというだけではなく、ここが今回の敵空軍侵攻部隊の拠点であり、主力部隊が集結してきているというのが一番大きい、そこでまだ敵が戦闘準備を基地でしているところを狙い基地もろとも破壊してしまおうということだ。
これには第445飛行隊所属のB-1Bを出撃させることにした。
このB-1Bはアメリカ空軍が運用する戦略爆撃機のことで、ランサー(槍騎兵)の愛称でよばれている。
B-1Bは兵装最大搭載量がB-2爆撃機の18tに比べて約三倍の56tも搭載することができる。
最高速度もマッハ1.25と音速を超えて飛ぶこともできるので、現場に急行して爆撃しそのまま敵の迎撃が上がってくる前にこの最高速を生かしてヒットアンドアウェイも出来るし、もし万が一敵に襲われたときはこれで素早くその場から脱することもできる、まさに“ランサー”だ。
この第445飛行隊所属のB-1B10機は、第一航空団の護衛を受けながら搭載できる最大の爆弾を抱え飛び去って行った。
彼らが飛び立ってから3時間後、彼らから「敵基地の完全な破壊と地上にいた敵の全滅を確認」と報告をしてきた。
細かい報告だと、敵竜騎兵隊の竜は広いグラウンドのような場所に露天の状態で寝ていて、兵たちはちょうど夕食の時間だったのか酒盛りをしていたのか、焚火の火の明かりがあたりをうっすらと照らしていて、何がどこにあるのかが肉眼でも確認できる状態だった。
そのため、爆発範囲が広い爆弾なのでそこまで精密に目標を絞らなくてよかったのだが、より効果的な爆撃をすることができたので、外したものがものすごく少なく、かつ短時間で済ませることができたと報告にはあった。
これを聞いた、夜にも交代で勤務している司令部要員や整備要員を沸かせていたが、彼らとは違った反応を示すものもいた。
それは、元々首都を爆撃するつもりで準備して今か今かと待機していた、第443飛行隊の兵たちだ。
彼らは、仲間の華々しい戦果報告を聞いて我慢できなくなったのか、命令違反でもいいから出撃させてくれと司令部に懇願してきた。
その迫力に負けた、司令部指揮代行が首都爆撃の命令を出してしまった。
本来であれば重大な命令違反として“処刑”は免れないことであったが、今回はもともと予定していたことでもあったので厳重注意のみで済んだ。
出撃命令(許可)が出た第443飛行隊は準備していたB-2爆撃機4機を発令からわずか5分の時間で発進させていた。
目標であるデスニア帝国の首都であるディシアは、セレンデンス基地からおよそ2442㎞の位置(往復距離4884㎞)にあるので、B-2爆撃機だと無給油で往復することができるので給油機は同行させず、それと護衛の戦闘機は航続距離などの問題でついていくことができないので単独での作戦になる。
敵地の奥深くそれに加えて一番危険な敵の首都に、彼らはそんなことを臆することもなく飛んで行った。
飛び立ってから5時間後、朝日が昇りかけ段々と明るくなってきたころ。
飛び立った彼らは一機もかけることも傷つくこともなく、無事に基地に帰ってきた。
第443飛行隊所属4機はまず首都上空に到達後、真っ先に首都の女帝のいると思われる城に一機目がGBU-57A/B(通称バンカーバスター)を投下、見事命中、爆弾の特徴を活かし城壁をいとも簡単に突き破り城の中心部に到達すると爆発大炎上の後、支えを失った城はあっけなく崩壊していったという。
その後、近くにあった帝国海軍ディシア基地を二機目がBLU-96(燃料気化爆弾)を投下し停泊していた艦船十数隻にたいして損害を与え、さらに夜なので基地内の兵舎で寝ていた兵士たちはそのまま永遠に目を覚まさなくなった。
次にディシア空軍基地と思われる場所に三機目はCBU-97(クラスター爆弾)を投下し地上に無数の子爆弾をばらまき無差別に攻撃し兵舎や倉庫・竜などを破壊または殺害し大きな被害を与えた。
最後に政府機関庁舎群に対して四機目が二機目と同じくBLU-96(燃料気化爆弾)を投下した、不幸中の幸いでこの時政府機関庁舎群には警備の人間以外いなかったので大きな人的被害にはならなかった、この場所にこの爆弾を使ったのは政府機関内にある書類などの情報を焼き尽くし政治活動はもとより経済活動なども含め妨害する意味も込められている。
こうしてこの世界初のコンダート王国による帝国首都ディシアへの直接的攻撃は大成功を収めた。




