137.温泉!
彼女らを待たせては悪いと思い、俺は思うように動かない体を無理やり動かしノロノロと歩き始めた。
そんな俺のことを心配に思ってくれているメリアは、寄り添うように支えてくれていた。
部屋を出てしばらくすると、王宮内を警備している王国衛視隊が20人ほど合流し、まるで何かの群れのようにゆっくりと王城内を縦断し、北側にある後宮に向かった。
後宮に近づくと衛視隊たちは離れ、多数の一般メイドたちが通路両脇に並び出迎えてくれた。
「「「「おかえりなさいませ!!」」」」
後宮内は入るとすぐに円形の大広間があり、両脇各階層(5階層)には個室がある、そして一階奥には食堂、二階奥はキッチン、三階奥は俺専用の部屋、四・五階には浴場がある。
俺は後宮についてすぐに自室へと一直線に向かい、ベッドに身を投げていた。
しかし、後から追ってきたメリアにすぐに起こされ、お風呂に入るようにすぐに促された。
そういえば、ここ(異世界)に来てからというもの、戦い続きで体はたまに拭いていたが、一度も湯船につかっていなかった。
メリアは直接何も言ってこなかったが、流石に匂うのだろう。
「寝たい気持ちはわかるわ、でも、久々にゆっくりと身を暖かいお湯の中に入れるだけでもだいぶ違うと思うから入ってきたら?」
「うん、そうする。でもやっぱりめんどくさい、それにただのお湯でしょ?」
「ただのお湯以外に何があるっていうのよ?」
「よくぞ聞いてくれました!元居た世界には“温泉”というものがございましてですな、ただのお湯と違って体にいい成分がたっぷりと入ったもので……話すと長くなるんだけど取り合ず普通のお湯と全く違うんだ!だから今から召喚して浴場のお湯全部温泉にしておくね?」
「う、うん」
急に俺が今までの暗い表情から一転、饒舌に語りだしたのを見て、メリアは目を見開き固まっていた。
「……良し!これで大丈夫!じゃあ入ってくるね!」
(温泉に入ると思ったら、テンション上がってきました!やっぱり日本人は温泉ですよね!!)
「ま、待って、私も……」
今にも飛んでいきそうな勢いでベッドから跳ね起き、その勢いのまま温泉に向かおうとしていたが、メリアは俺の袖をつかみ上目遣いでこっちを見ていた。
「じゃあ、一緒に行こうか!」
「うん!」
すぐに、浴場へと向かった俺たちは、着ているものを浴室前のかごに脱ぎ捨て、バスタオルを持ち引き戸を開け入っていった。
「そう!これ…………って、ええええええぇぇぇぇ!」
「何よ!そんなに驚くことないじゃない、一応私だって恥ずかしいから、隠すところは隠してるわよ?(見たければはぎ取っていいんだからね)」
メリアは大き目のバスタオルを巻き、髪は邪魔にならないように後頭部にお団子にしてまとめてある。
(可愛すぎるでしょ!しかも、エ〇イです)
「最後なんて?」
「いいの!とりあえずはいろ!」
「え、ここって」
「何を言ってるの?ここは混浴よ?といっても男はワタしか入れないけどね。ほら、入ろ!」
「あ、ちょっと!」
いつまでも入ろうとしない俺に痺れを切らしたメリアは俺の腕を引っ張り湯船へと誘う。
お湯につかると、今までの疲れもあってしみるような感覚に襲われたが、それがまた心地いい。
メリアは俺のすぐそばに入り寄り添ってきていた。
「やっぱり、可愛いな、メリアは」
「何よ!やっぱりって……でも、ありがとう!そういってもらえるのが一番うれしい」
しばらくお湯につかり満足した二人は、そのまま部屋に戻りベッドに入り、湯上りの心地よさも手伝いすぐさま眠りについたのだった。




