121.奇襲
俺はウィスティリアに向かって頭を下げていた。
「陛下、頭を上げてください、我々は本来陛下のご命令をもとに任務を完遂させることが使命なので、私が謝ることは筋が通っていますが、陛下が頭を下げてしまっては私にはどうすることもできません……ただ、そんな陛下の姿勢や考えがみんなの信頼の元となっていることはいいことだと思います」
「そうだな、ありがとう」
こうやって実際言われてみると照れ臭いが、この完全に上からではなく時に非を認めたり、足りない部分を助けてもらう姿勢をもって接することというのは他人から見れば頼ることもできるし、頼ってもらえるというその人自身の存在の肯定にもつながる。
「陛下!今すぐCDCにお越しください!」
必死の形相で俺に報告してきたのはベイル艦長だった。
「何があった?」
「敵の奇襲です!」
「分かったすぐに行こう」
急いで3人はCDCに戻ると、中央の大型ディスプレイ上には空母機動艦隊の前線の一番右に位置するイージス艦こんごうのレーダーが映し出されていた。
「敵の航空部隊と思われる機影およそ100!さらに接近!」
「何だと?さっきので敵航空部隊は排除したのではないのか?」
「ええ、前の航空部隊は“海軍所属”と申しましょうか、帝国にはもう一つ“陸軍所属”の航空部隊があります。なので恐らくその部隊が出張ってきたのではないかと……」
いつの間にいたのかアリサはCDC中央に位置する指揮官席に座っていた。そして俺が部屋に入ってきた途端に立ち上がり、何故か俺に抱き着いてきていた。
「あ、アリサ?なぜそれが今となってしかも海に出てくるんだ?それとなぜくっついてきた?」
「よいではありませんかワタ様、いいえ、旦那様?……そんなことより敵の航空部隊のことでしたよね?きっと彼らは内陸で“獲物”を食い尽くして新たな“獲物”を探そうとのこのこと出てきたのだと推察します、きっと彼らのことなので海軍所属の航空部隊とは違って本能の赴くままに動く野蛮な連中しかいないので、深いことは考えていないと思います、さらに言うとこちらの存在にはおそらく死んでも気づくことはないでしょう」
「お、おう……」
(そんなことより、アリサの柔らかくて心が躍るものが背中に当たってるんですけど!?そんなことしたら俺のリトルブラザーが大変なことに)
アリサの身長はそんなに高くはないが、出るところは出て(特に胸)引っ込んでいるところは引っ込んでいて、まるでA〇女優のようなエロい体付きをしている。そんな体を密着されている当の俺の理性はもはや我慢の限界である。
この状態の俺に気付かないふりをしているのか自然にやっているかわからないが、そんなアリサ曰く、さっきまで相手をしていた海軍所属機は高度な訓練と教育がなされた所謂エリート集団だったのに対して、陸軍所属機は言ってしまえばただの現場上がりの兵卒や下士官で、その中でも少しでも乗りこなすことができる連中の寄せ集めなので質よりも量を優先した部隊と言えよう。
「第一駆逐戦隊旗艦こんごうより入電!我、対空戦闘必須と認める、指示を!です」
「こんごうに打電、第一駆逐戦隊全艦で対空戦闘を開始せよ!……それと更なる事態に備えて給油と補給を済ませ終わった機体を10機ほど発艦させろ!」
「陛下、お言葉ではありますが艦載機部隊は非常に消耗しております、誠に勝手ながら意見を具申させていただきますと、艦載ヘリ発艦を提案いたします」
「そうだなウィスティリア、そうしよう、ただ、ここは戦場だ!時には無理も必要なことだけはわかっているよな?」
「はッ、心得ております。帰還してきた艦載機はすぐさま給油と補給を終わらせ、即時待機にしておきます」
「では、ウィスティリアと艦長は空母上空の状況を注視し発艦が必要とあれば航空部隊を発艦させのその指揮をとれ、アリサは艦隊の状況を注視し、もし対空戦闘の能力が限界と判断したならば艦載機発艦命令と第一艦隊の救援要請を出してくれ、何か質問は?」
「「「ありません!」」」
「状況開始!」




