95.戦艦大和!
「気を付け!これより陛下より賜ったこの軍艦に乗艦し訓練を開始する!皆心して掛かれ!敬礼!!」
「「「「了解!」」」」
その声を聴いてようやく正気に戻った俺は、すぐさまミサとエミリアと幹部たちに操艦の仕方のマニュアルを渡し細かいことの説明をした。
大和にはミサ中将が練習艦隊司令長官として、さらには視察としてヴィアラも乗艦する。そして大和の艦長にはエミリア大佐乗艦することとなった。
同行する武蔵の艦長にはエミリア大佐の同期のフィスラ・ユエル大佐が、そして副長として同じく同期のカレナ中佐が乗艦する。
そしてしばらくの間、この二隻で練習航海及び模擬戦闘訓練を行い、その訓練が順調にいけば他の兵や幹部への教育が始まる。
教育や練習とはいってもほとんどの兵や幹部は木造の帆船(○イレーツ何とかに出てきそうな船)で航海や海の生活、戦闘には慣れているはずなので現代兵器の大砲や照準器、動力等といったこれまで扱ってこなかったものの使い方などに慣れてもらう事を中心にやっていく。
もちろん使い方等はLiSMの能力によってすぐに使えるようになっている。
この要領で強引なのは百も承知だが、半年以内に8隻での運用が可能状態に持っていきたい。
「流石は陛下!これで勝利へと一歩近付けますね!」
「いや、これでうぬぼれてはいけない。いくらアドバンテージが出来たからと言って、海軍がしっかりとこの船を運用しなければ勝ち目はないのだから」
「し、失礼しました。でわ、わたくし共も艦へ向かいましょうか?」
「是非そうしよう」
興奮の抑えられない俺とミサは速足で大和へと向かっていった。
埠頭には右に武蔵が、左に大和がその身を寄せ合うかのように泊まっている。
巨艦の間を歩いているとまるでビル群の間を歩いている様である。
艦首右舷にある乗船用ラッタル(階段のようなもの)を上り、いよいよ乗り込む。
ラッタルを登り切ると目の前には大和型戦艦の象徴ともいえる45口径46㎝3連装砲2基と、60口径15.5㎝三連装砲1基が目の前に鎮座していた。
そしてそのすぐ横には艦橋がそびえたっていた。
なぜここで俺が艦橋に昇るために、艦橋内のエレベーターやラッタルを使わず、わざわざ外のラッタルを昇ったのか。
それはただ単に景色を見ながら昇りたかったからだ。
一気に登り切った後、思い出したように後ろを振り返ると、ミサ中将が少し息を切らして立っていた。
「陛下!急に上られてどうされたのですか!?」
「悪い、この艦を見たとたん興奮してしまって……そんなことより早くこの上にのぼるぞ!」
「了、了解しました!」
(私もこの艦に興味があるけど陛下はそれ以上なんだな……)
ミサは驚き半分あきれ半分のままワタの後を追っていたが、本人はそんなことは気にせず目を輝かせながら艦橋を上っていった。
大和の艦橋を上るには艦橋中央部にエレベーターがあるのだが、それには乗らず外側のラッタルを上っていった。
上に上がっていく途中、下を見ると武蔵の方ではゆっくりと乗り込みが始まっていたが、大和では俺が急に上って行ってしまったので、兵たちが慌てて上っている様だった。
(興奮して何も考えずにここまで登ってきちゃったけど、ミサと兵たちには悪いことをしてしまったなぁ……)
少し罪悪感を覚えながら再びラッタルを上ると、第一艦橋へと着いた。
ここから下を見ると45口径46㎝3連装砲2基と60口径15.5㎝3連装砲1基が並んでいて圧巻である。
内部構造や機器をみているとぞろぞろとミサを含めた士官達がやってきた。
「陛下お待たせしました!総員配置完了しました!」
「ご苦労様、俺のせいでこんなに急がせてすまなかった」
「いえ、早いことには越したことがないので(少し焦りましたが……)」
「そうか、ではさっそく出港と行こうか!」
「「「了解!」」」
一人勝手に行動したせいで、当初の予定とはずれてしまったが何とかまとまることができた。
通信によって武蔵も出港準備ができたみたいなので、さっそく出港することにした。
かくして近い未来にこの世界で、絶対的な地位を手にする艦隊が誕生するのである。




