病める者
1文1文じっくり読んでいただけるとありがたいです。
その者は笑いながら目尻から血を垂らしていた。
その者はある時、腕を失ったものに言った。
「大丈夫?」
と。腕を失った者は答えられなかった。
その者はすぐ去って行き、また別のものに話しかけた。
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ある日、その者はある女性と話をした。正確にはある女性の話を聞いていた。
ある女性は俯いたままその者に、平凡に生きていれば気付くことができないであろう話をした。
ある女性は話し掛けた。それだけだ。調子に乗っているそうだ。
その者はいつも通り笑顔で話を聞いていた。いつも通り、人の裏や世間の闇についての。
そう、いつも通りのはずだった。何がきっかけかは分からない。だがそういうものなのだろう。
その者は突如声を上げ始めた。真っ黒なものが確実にその者の物になった。そして助長した。爪が伸び、髪は無くなり、角が生え始めた。繕う必要のない物にその者は歓びを隠せなかった。必要なかった。
その者は、二度と目尻から液体を垂らすことはなかった。
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ある日、その者はある女性と話をした。正確にはある女性に相談をしていた。
ある女性はその者にとって唯一の存在だった。その者は顔を上げた途端、気付いた。
その者はそれまで相談していた事など覚えていなかった。その者は真っ黒な物をひたすら吐き出し始めた。ただ学校であったことを母親に伝える子供のように。
ある女性は強かった。既に経験しているのだろう。ただひたすら全てを受け止めていた。
その者は、二度と目尻から血を垂らすことはなかった。
こんな読みにくい文章を読んで下さってありがとうございます!
よろしければ是非、あなたなりの解釈を書いて下されば幸いです。