バラバラになった天文部
年が明け、冬休みが終わり大学に行くと真鍋から新入部員の二人がやめたと言ってきた。理由は語らなかったそうだが、同じ部員が亡くなったことが関係しているんじゃないかとなんとなく察しがつく。春には天文部は廃部になるかもしれない。
俺は教育学部があるキャンパスに出向いてみた。中庭のベンチに座っている七星を見つけた。
「七星…なんで電話に出ないんだ。さやか達も探してくれてたんだぞ」
「先輩…ごめんなさい。しばらく実家に帰ってたんです」
七星はまだ柊二の死を受け止められていないようだ。顔を見ればわかる。そりゃそうだろう。
「今日、講義が終わったら会える?」
プレゼントを渡そうと思った。余計悲しくなるだけかと思ったが…
待ち合わせのカフェに七星がやって来た。
「少し瘦せたよな?元気だったか?」
「…」
「元気なわけないか。俺も同じだよ。七星…大丈夫か?」
「…正直、まだ嘘なんじゃないかと思ってしまう。私、葬儀にも行けなかった。最低だよね」
「そんなことないよ…コレさ、柊二から七星へ」
俺はプレゼントを差し出した。クリスマスカラーのリボンが付いたネックレスが入った箱を。
七星の手が震えている。箱を開けた途端、七星の目から大粒の涙が一気に溢れ出した。
俺は泣いている華奢な体の彼女を抱きしめたくなった。だが、俺には見ているだけしかできなかった。この子は柊二を忘れることなんかできないんじゃないか。
そして春がやってきて、俺は大学を卒業した。正式に天文部も廃部となった。部長だった俺は、真鍋達に何もしてやれなかった。