星に願いを
柊二が事故に遭って五日が経った朝、柊二のお母さんから電話がかかってきた。
「もしもし悠紀君…柊二に会いに来てくれるかしら?」
電話先のお母さんはとても落ち着いた様子に思えたが、決して明るい感じではなかった。詳しいことは聞いていないが、とにかく病院に急いだ。途中、七星に電話をしたが講義中だったのか電話に出ないので留守電にメッセージを残した。
病室の前に柊二のお母さんがいた。
「来てくれてありがとう。あの子…危篤なの…さぁ、会ってやって…」
何かの冗談かと思った。「嘘だろー!!」と叫びながら勢いよく病室のドアを開けた。ベッドに管で繋がれまくっている柊二がいた。俺は何度も「目を覚ましてくれ目を覚ましてくれ」と叫んだが柊二は反応してくれなかった。後ろでお母さんはうつむいたまま涙を流していた。ようやくこれは嘘ではないのだと悟った。
「今晩が峠だそう。今まで仲良くしてくれてありがとうね。柊二はいつか大学の天文部みんなをウチに泊まりに招待するから…って言ってたわ」
俺は何の言葉も出ない。
「それから、このリボンのついてる紙袋、汚れちゃってるけど誰かに渡すプレゼントだったのかしら」
俺はコクリとうなずいた。
「よかったら代わりに悠紀君が渡してくれない?でも相手の子にとって、もう迷惑かしらね」
「そんなことありません。柊二の彼女です。必ず渡します」
「あの子、恋人がいたのね。こんなことになって本当に申し訳ないわ」
俺はプレゼントを預かり、ふらふらと病院を出た。
気づけば星の山公園に来ていた。柊二のことを考えているといつの間にか夜になり、ふたご座流星群が流れているのを見つけた。もうピークはとっくに過ぎているのにまだ見えるなんて…まるで柊二が俺に何か語りかけているようだ。俺は柊二に奇跡がおきますようにと何度も何度も願った。
翌日、柊二が亡くなったという知らせがきた。もう二度と親友に会えないということがどういうことか俺には理解し難い現実となった。涙が枯れるまで泣いた。柊二もまた、この若さで人生が終わるだなんて思ってもいなかったことだろう。かわいそうに…
お通夜には七星を除いた天文部員が参列し、みんな憔悴しきっていた。
お通夜の後、俺はみんなに七星のことを知らないか聞いてみたが誰もわからないと言っていた。
七星はお葬式にも姿を現さなかった。
そして冬休みに入り、世間はクリスマスで盛り上がっているなか、七星に柊二からのプレゼントを渡そうと思っていたが、電話をかけてもメールをしても返事がなかった。