流星群と悲劇
翌日、天気は晴れ、新月。流星群を見るには好条件だ。俺は夜の出発の時間まで最新号の ”星から君へ” を読みながらゴロゴロしていた。 ”ちょっと聞いてよ星にまつわるロマンチックな話” という読者からのお便りコーナーを読んでいたら、まさかとは思うほど心当たりのある内容だった。俺は読みながら自然と涙が溢れてきた。
車に部の天体望遠鏡とカメラ、夜食を積み込み出発した。
星の山公園に着いたらまだ俺しか来ていなかった。望遠鏡のセッティングをしていたら真鍋の車に同乗していたさやか、香世、七星が来た。そして新入部員の二人も集まった。
「あとは柊二だけだな」
まだピークではないがポツポツと流星群が流れ始めた。
「わぁーきれいー」みんな自然と言葉が出る。
21時半近くになるが柊二はまだ来ない。
「柊二先輩まだ来ませんね。連絡してみましょうか?」と真鍋が言った。
「柊二は実家から車で来るって言ってたから、少し遠いしどっかで渋滞にハマっているかもしれないな。もう少し待ってみよう」
俺はそう言って七星をチラッと見た。柊二のことを心配しているような表情だった。
22時。柊二はまだ来ない。ついに七星は携帯を取り出した。
「電話にも出ない。悠紀先輩、何も連絡ないですか?」
俺も携帯を見てみたが柊二からの連絡はない。まさか何かあったんじゃ…柊二に限ってそんなことあるはずないと思いながら柊二の実家に電話をかけた。電話に出たのは旅館の従業員だった。
「もしもし、夜分遅くにすみません。柊二君の友達で工藤と申しますが、柊二君は家にいますか?」
「…」沈黙が続いた。
「あのー、柊二君は…?今日約束してるんですが携帯がつながらなくて実家に電話をと思いまして…」
「…聞いてないんですね。柊二君は夕方、車で出かけて運転中にトラックとぶつかって病院に運ばれたそうだけど意識不明の重体だそうです。今、ご両親が付き添って病院にいるそうよ」
俺は足に力が入らずその場に座り込み、ただただ嘘であってくれと願うばかりだった。明らかに俺の様子がおかしいとみんなが気付き、七星は「柊二先輩に何があったの!!」と叫びながら泣いていた。観測会どころじゃなくなり、柊二が運ばれた病院に急いで向かった。真鍋が運転してくれていた車中では、七星がしくしく泣き、さやかが「大丈夫大丈夫」と言葉をかけていた。
俺達が病院に着いた時、柊二の手術が終わった直後だった。柊二のお母さんは涙をこらえていた。容体は深刻だということを俺は悟った。柊二の荷物が長椅子に置かれていた。その中に昨日柊二に見せてもらった七星へのプレゼントが入った紙袋もあった。真っ白な紙袋が、血で真っ赤に染まっていたのだった。
「ごめんね、みんな。来てくれてありがとう。あの子、大丈夫だから…また連絡するから今日のところは帰ってくれるかしら」
柊二のお母さんはそう言って、医者に話を聞きに部屋に入った。
翌日もそのまた翌日も柊二の両親から連絡はない。俺は柊二のことがとても心配だったが七星のこともまた、たまらなく心配だった。キャンパスが違う七星とは、部活動以外で大学では顔を合わすことがない。
俺は七星に電話をかけてみた。
「もしもし、七星…ちゃんと講義出てるか?」
「悠紀先輩…今日、体調悪くて休んじゃった」
「大丈夫か?一人暮らしだろ?さやかや香世に行くように頼もうか?」
「ううん、大丈夫。明日は行けそうだから。それより柊二先輩…」
「連絡はまだだよ。お母さんも大丈夫だって言ってたろ。連絡あればすぐに七星に言うから」
七星の弱々しい声がなんとも言えない辛さを語っている。