親友
観測会の前日、俺は柊二と街をブラブラし、そのあと夕食を食べに店に入った。
「明日で俺達の天文部の活動は最後だな。部長、おつかれさま」
「おまえもな。4月から部も存続できそうだし、新部長はやっぱ真鍋だな」
「あぁ、アイツなら天文部を引っ張っていってくれるよ」
「俺は4月から出版社で働いて、いつか天文雑誌 ”星から君へ” の担当になって東陽大学天文部の取材ができたらなと思うよ」
「悠紀らしいね。頑張れよ。俺は実家の旅館を継ぐだけだから就活は何の努力もしてないけど、仕事はちゃんとやらなきゃな。親に甘えてばかりはいられないな。そうだ、今度久しぶりに実家の温泉に入りに来いよ」
「あぁ、高校の頃はちょくちょく遊びに行ってたけどな。木崎旅館、また行くよ」
「そうそう、さっき悠紀が来る前にコレ、七星へのクリスマスプレゼント買ったんだ」
「何買ったんだ?」
「ネックレスだよ。前にデートした時に七星がじっと見てたんだ。欲しいんじゃないかってね」
「へぇーうまくいってるみたいだな。クリスマスは楽しみだな」
「あぁ。悠紀は好きな女の子いないのか?大学入学してからバイト先の年上の人と付き合ってたろ。別れてだいぶ経つよな」
「まぁ今はそういうの考えてないから」
俺も七星のことを好きだということを柊二は知らない。柊二は俺の親友だ。二人が付き合っているんだから俺は自分の気持ちよりも二人に幸せになってほしいと思っている。
「あ、もうこんな時間だ。今日は実家に帰るんだ。親から電話があって昔の天体望遠鏡を修理したから明日使えるんじゃないかって連絡きたんだ。なので俺は明日、実家から直接車で公園に行くから」
「わかった」
俺達は翌日の観測会を楽しみにクリスマスモード一色の繁華街を歩いた。親友との食事、雑談、今までの青春の日々。そして社会人になっても変わらずつるんでいるんだろうと、そんな日常を思いながら駅に着いた。俺達は「また明日な」と言葉を交わし、それぞれの帰りの電車に乗った。