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星空指数100  作者: マリーミチコ
3/20

七夕伝説

  大学四年の秋、文化祭が近づいてきた。天文部からの出し物はプラネタリウムだった。ストーリーの内容を考えるのに部員が集まり話し合った。

「アタシ文章力ないからストーリーの提供だけするね、まとめるのは七星がいいんじゃない?向いてそう」とさやかが言った。香世は

「いや、さやかが考えたストーリーなんて男女のいざこざ話ばかりだから、ここはやっぱり真鍋君で」と言ったが真鍋は

「僕は天文オタクだから星座の由来とかそういう話しか思いつきませんけどいいですか?」と言った。

「暗いね。新入部員増やしたいならもっとロマンあふれる恋愛話にしようよ。みんな食いついてくれるよ」とさやかが提案した。柊二は

「そうだなぁーじゃぁ恋愛を交えつつ、見てくれる人が星座に興味をもってくれるような内容でいいか、部長?」と言った。

「よし、それでいこう。まとめるのはさやかが言うように七星、やってくれるか?」

「はい、やります」

そんなこんなでプラネタリウム作りを始めた。

プラネタリウムの題名は ”七夕の奇跡”

思いっきり秋だったが七夕はみんなが食いつく話だろうってさやかがうるさいからそれに決めた。


 文化祭。香世と真鍋は星座を映し出す機械の操作係。柊二とさやかはスポットライトをあてる係。七星と俺はストーリーを読む係。

「お客さん入ってるかな?」舞台の袖から香世が顔を出して確かめていた。

「なかなか入ってるよ。こりゃあお客さんの反応が楽しみだわ」さやかも気合いが入っていた。

「星座を書いたの僕ですから。超完璧な仕上がりですよ」真鍋も得意げだ。

「私ちゃんと読めるか心配」七星が弱気になっていた。

「大丈夫。中学高校は放送部だったんだろ。七星のきれいな声にみんな魅了されるから」柊二が七星を勇気づけていた。

「俺もストーリー読むの緊張してるけど、悔いのないようにみんな楽しもう」

俺達は円陣を組んで気合を入れ、それぞれの持ち場についた。


「悠紀先輩、最後の一行は二人で息を合わせて読むの成功させましょうね。練習ではあんまり上手くできなかったけど」

「大丈夫だよ。きっと上手くいくから」

「悠紀先輩はどの星座が一番好きですか?」

「あー、俺は昔からカシオペア座が好きでさ、なんかあのWの形が気に入ってるんだよね。それにカシオペア座は北極星のある北の方角を探すのに役立つんだ」

「あ、それ知ってる。私も天文部だからそのぐらいは知識あります。へぇー先輩はカシオペア座が好きなんだね」

「そういう七星はどの星座が好きなんだ?」

「あっもう始まる時間」

 始まりのブザーが鳴った。ホールは暗くなり、夏の星座達がスクリーンに映し出される。ホールからは

「おぉー」という声が次々に聞こえてくる。南にさそり座、真っ赤に輝くアンタレスとよばれる一等星が目立っている。北には北極星、カシオペア座、北斗七星がきれいだ。そして東にこと座、わし座、はくちょう座。今回の七夕にまつわるプラネタリウムが今始まる。


七星「はるか遠い昔、こと座のベガというとてもきれいな女性がいました。見る人ぞ振り返るモテモテの色気のある女性です」

悠紀「少し離れたところにわし座のアルタイルという男性がいました。これがまたイケメンでなかなかのモテ男です」

七星「ベガとアルタイルは天の川のほとりで偶然出会い、お互いに一目惚れをしました。二人は付き合うことになり、いつも天の川がデートの待ち合わせ場所でした」

悠紀「ある日、待ち合わせの時間になってもアルタイルはやってきません。ベガはずっと待ち続けていました。そこへはくちょう座のデネブがベガに言いました。アルタイルはさそり座のアンタレスと一緒に出かけたよ。最近アルタイルは遊んでばかりだな。デートもすっぽかすんだからな」

七星「それを聞いたベガは怒ってしまい、アルタイルにもう会いたくないと思いました。ベガは天の川を隔てた西側で機織りの仕事に没頭しました」

悠紀「一方アルタイルは、デネブからベガが怒っていることを聞き、急いで謝りにいこうと思いましたが、遊んでいる間に牛の世話や畑仕事が山のように残って、すぐに会いに行けませんでした。アルタイルは天の川の東側でせっせと仕事をしながらもベガのことを考えていました。見兼ねたデネブは自慢の大きな白鳥の羽を天の川に精一杯広げ橋を作りました。そしてベガとアルタイルを橋の上で会わせ、二人は晴れて仲直りをするのでありました」

七星、悠紀「それは7月7日のことでした」


 ホールから拍手が沸き起こった瞬間、七星と俺は目を合わせ、互いに喜んだ。七星はうっすら涙が滲んでいた。俺も天文部での大仕事を終え安堵していた。プラネタリウムの後、天文部から星座の由来や説明をして締めくくった。


 その日の夜はみんなで打ち上げをした。

「今日のプラネタリウム、大成功を祝してカンパーイ!」

「ねぇ、ストーリーよかったでしょ?お客さんにも好評だったし」さやかが自慢げだ。

「まぁドロ沼話じゃなくてよかったよ」香世も珍しくさやかを褒めている。

「それにしても僕が描いた星座とイラストは完璧でした」真鍋も満足げだ。

「俺とさやかのスポットライトの当て方も上手かっただろ。みんな頑張ったけどやっぱり今日は悠紀と七星のナレーションが一番最高だったよ」

「どーも。お客さんにも星の魅力が伝わったと思うよ。柊二と俺にとっては最後の学祭だったし、いい思い出ができた。みんなありがとう」

「私も読むの緊張したけど無事終わってホッとしてる」

 楽しい宴は夜遅くまで続いた。さやかがいつものごとく酔いつぶれ、柊二が送っていくことになった。俺と七星は帰りの方向が一緒で歩いて帰ることになった。


「知ってるか?七星、織姫と彦星は恋人同士じゃなくて夫婦だってこと」

「え?そうだったの?ずっと恋人同士だと思ってた」

「そう思ってる人はけっこういるみたいだぞ」

「先輩達に負けないくらいもっと星について勉強しよ。それにしても七夕伝説ってある意味ロマンチックだね」

「あぁ、夫婦だけど一年に一回しか会えないんだからな」

 二人で空を見上げた。夏の星座の話をしていたが空は冬の星座が輝いている。街の明るさであまりたくさんの星は見えないが、冬の星座を代表するオリオン座やおおいぬ座がキラキラしている。

「あっ、先輩の好きなカシオペア座だ」

「あぁ。あと惑星では金星も好きなんだ。金星は夕方、圧倒的な存在で魅了される。知ってるか?七星、金星は英語でビーナス。女神さまのようにとても美しく輝いてるから、うちの実家で飼っている犬の名前をビーナスってつけたんだ。それはそれはもうかわいくて…」

「フフフフ…」

「なんだよ?」

「だって先輩、犬の名前をビーナスって。それ、誰かに話すの私だけにしないと笑われちゃうよ?」

「もう笑ってんじゃねーか。そういえば七星が好きな星座はなに?プラネタリウムが始まる直前にも聞いたけど聞きそびれたから」

「私はねーやっぱり北斗七星でしょ。なんか親しみを感じるんだよね」

「ハハ…そりゃそうだな。ちなみに北斗七星は星座の名前じゃないんだぜ。おおぐま座だよ」

「さすが先輩!勉強になります」


 二人で星の話をしながら帰った。七星が空を見上げ、無邪気に話してる姿を見ていた俺は、彼女に惹かれていった。七星と柊二が付き合っていることを承知の上で…



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