勝てない相手
俺は仕事に邁進した。天文ファンの読者にたくさんの情報を提供して、毎号楽しみにしてもらいたい。
また浜田くんに次の活動の日程を聞いたらペルセウス座流星群を見に行くとのこと。その頃には教員採用試験も終わってるから参加できるという返事だった。
うだるような暑さの中、真鍋とさやかから呼び出しがあった。
待ち合わせの店に行くと気持ち悪いくらいさやかがご機嫌だった。
「先輩、七星と会ったんだってね?」
「あぁ、七星から聞いたのか?」
「まぁね。あの子、吹っ切れたように心から清々しい表情だったわ。先輩、やってくれるじゃない」
「いや、俺は何も。七星は自分自身で歩き出したんだよ。元々真面目な子だし、俺にまで気を遣ってくれたり。さやかみたいにぶっ飛んだ性格じゃないだろ?」「確かに!」真鍋も頷いた。
「あなた達ひどいわね」
「ところで、先輩はどうなんですか?」
「どうって?」
「七星ちゃんのこと、好きなんでしょ?気持ちは伝えないんですか?」
「それは…俺は七星が立ち直ってくれただけで今は嬉しいんだよ。北極星の柊二には勝てないわ。なーんてな」
「本当にいいの?いつまでも柊二先輩に遠慮してちゃ自分の幸せつかめないよ。悠紀先輩もいい歳なんだし」
「そうは言っても七星は俺のこと好きじゃないだろ」「どうかしらね…わかんないわよ」
その帰り道、また空を見上げた。
柊二…これからの七星を俺が守ることができるのだろうか。大学時代、俺も七星のことを好きになった。でも、二人がうまくいってるならそれでいいと思った。俺も七星が好きだと、あの頃おまえに言っていれば俺達どうなっていたかな?