五年前のメッセージ
俺は帰ってから早速、記事を書くことに取り掛かかった。昔の ”星から君へ” を参考にしようと家の本棚から引っ張り出してきた。ふと見覚えのある表紙を見つけた。パラパラとページをめくってみると、読者からのお便りコーナー ”ちょっと聞いてよ星にまつわるロマンチックな話” が目に入った。そしてハッとした。これは大学時代、ふたご座流星群を見に行く日、柊二が事故に遭った日に読んだ号だった。これは柊二が投稿したんじゃないかと当時思った。
ペンネームは星バカSHUJI。
翌日、会社で今までの投稿者のハガキを探し出し、差出人を確認した。
俺はさやかから受け取った七星の連絡先を書いた紙を手に取り、七星にメールをした。近々会おうと。
七星から返事が返ってきて、会うことになり、待ち合わせのカフェに入った。
「遅くなってごめんなさい」
「いいよ。学校のことでいろいろ忙しいのに来てくれてありがとう」
「話したいことあるって、なにかあったのかな?」「あぁ、いやその・・」何だか上手く伝えられない。「学校はどう?担任やってるのか?」
「二年生の担任。大変なこともあるけど頑張ってるよ。」
「そっか。あのさ!コレを見てほしいんだけど」
俺は持って来た ”星から君へ” 見せた。
「古い号だね。何か載ってるの?」
「このページ読んで見て」七星は読み始めた。
「ちょっと聞いてよ星にまつわるロマンチックな話 もうすぐふたご座流星群が見られる季節ですね。俺はふたご座だから、毎年5月の自分の誕生日よりも、流星群を見る方が好きかな。空に自分の誕生日の星座があるってロマンチックだよね。女の子っぽいこと言って気持ち悪がられるかもしれないけど。実はふたご座よりも一番好きな星がある。それは北極星。理由はいつもそこにあるから。ほぼ同じ位置で真北で輝き、季節に関係なく年中見られる。その北極星の探し方は北斗七星やカシオペア座からも簡単に見つけられるようになっている。俺の恋人は北斗七星が好きで俺の親友はカシオペア座が好きで。例えだけど、俺はどこにいてもいつも二人に見つけてもらえるような、そんな位置にいるのかなって思う。自分を北極星に例えるなんて恐れ多いけど。あー早くふたご座流星群見たいぜー。」
「これってもしかして…」
七星は俺の顔を見てこの投稿が柊二だと悟った。今にも溢れそうな涙をこらえていた七星。
「あいつ、こんなの書いて出してたなんてな。俺がこれを読んだのは柊二が事故に遭った日なんだ。何となくこれは柊二じゃないかと思ってた。そしてあんなことになっただろ。七星…見つけに行ってやらないか?あいつを」
七星はゆっくりと頷いた。
俺達は星の山公園に向かった。どんより曇っているが北の空は少し晴れている。この季節、北斗七星は少し見えにくくなっているがカシオペア座と共に北極星を見つけた。
「明るいな」
「北極星?」
「あいつみたい」
「柊二先ー輩ー!見つけたよー」
「柊二ー!いつでも見つけてやるよー」
俺達はあははは〜と笑い合いながら北の空を見ていた。七星の曇っていた心は少し晴れたような気がした。君はもう大丈夫だ。