後輩からのプレゼント
後日、さやかから今日会わないか連絡がきた。
待ち合わせの居酒屋に入ると、さやかはすでに飲んだくれていた。
「おいおいどうしたんだ?真鍋となんかあったか?」「どうしたもこうしたもないわよ。今日は先輩のことよ!七星に会ったんだって?七星から連絡が来てアタシも会ってきたわよ」
「実は偶然だったんだ。俺もビックリして…」
「それで?」
「それで?って言われても。俺は仕事も兼ねて皆既日食を見てたわけだから七星とゆっくり話すことなんてできなかったし、やっぱりあの子にとって俺は、辛い過去の一部なんじゃないかと…柊二と親友でいつもつるんでたからいろいろ思い出しちゃうだろ?」
「あははー。二人は似た者同士だね。同じこと考えてるよ」
「?」
「七星も、悠紀先輩が自分と会ったことで柊二先輩のことを思い出して辛くなるんじゃないかと思ったみたいよ。それからアタシ、まだ柊二先輩のことが好きなのか聞いちゃったんだ」
「好きに決まってんだろ。柊二からのクリスマスプレゼントのネックレスつけてたし」
「はっ?もしかしてNのアルファベット型のネックレス?この前会った時つけてたわ」
「柊二が亡くなって俺が代わりに七星に渡したんだ」「それはハート型のネックレスだよ。アタシ、大学時代につけてるの見たことあるよ。柊二先輩から最後のプレゼントをもらったって言って泣いてたからよく覚えてる」
「あーそっか…俺、柊二がどんなの買ったか見せてもらってなかったわ」
「思い込みもいいとこよ。それより七星、なんて言ってたか知りたい?」
「意地悪だな」
「柊二先輩が亡くなった日から、時は止まったまま…毎年クリスマス近くになるとふたご座流星群も見たくなくなるほど泣けてくるんだって。要するに忘れられない存在ってこと。柊二先輩も罪な男ね」
「…」
「でももうこの世にいないんだし、いつかは前を向いて歩き出さなきゃいけないってことを頭ではわかってるみたいなんだけどね」
「…」
「あれ?先輩、聞いてる?あとさ、コレ!七星の連絡先。アタシからのプレゼントよ。あの子を救ってやれるのは先輩しかいないと思うんだけどな。五年も過ぎて偶然会えたのも何かの巡り合わせ。浜田くんだっけ?感謝しなさいよ」と、さやかはお酒を飲んでたわりには真面目な話をした。そうは言ってもどうしていいのか俺にはわからない。これは七星の気持ち次第だから俺にできることなんてあるのか。