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星空指数100  作者: マリーミチコ
10/20

仲間との再会、夢

27歳の春、俺はついに ”星から君へ” の天文雑誌を担当することになった。若い頃からの夢でもあり、ワクワクしていた。編集長からまずは好きに取材してきていいと言ってもらえた。

 俺は思い出のある母校にまず出向いてみた。五年ぶりだな。ほとんど変わってないな。部室の前を通りかかると運動部の部室が独特のにおいがして相変わらず臭いな。懐かしい。その時、天文部と書いている部室が俺の目の前にとびこんできた。復活したのか…?

 俺はドアを開けてみた。天体望遠鏡が数台置いている。それに天体写真も。ふと壁に目をやると俺は驚きのあまり「うそ…だろ?」と声が出てしまった。懐かしのメンバーの写真が飾っていた。柊二、真鍋、さやか、香世、七星、俺も写っているペルセウス座流星群の観測会の時の集合写真や文化祭の時の写真。いったい誰が…と思っていると部室のドアが開いた。

  真鍋が!真鍋がそこにいた。

「えっ悠紀先輩?どうして?」

「それはこっちのセリフだよ。なんで真鍋が?天文部は今あるのか?」

「はい。僕は院を卒業後、今も大学に残っていて物理の研究をしています。あれから廃部になった天文部を復活させて今は部員が七人もいるんですよ。すごいでしょ?僕は天文部のサポートをしているんですよ」「ちょっと待て。ツッコミどころ満載なんだけど!将来は教授になるのか?天文台で働くのが夢だって言ってなかったっけ?」

「天文台で働くにはなかなか求人もないし、ひとまず院にいって就職どうしようか考えていたら物理学の教授に声をかけてもらったんです。それで大学にこのまま残ろうと思って今に至ります」

「そっか。真鍋は優秀だったからな。部員はおまえが集めたのか?」

「はい、三年前ですけど。柊二先輩が亡くなって部も廃部になって僕もすごく辛くて、星のことなんかもうどうでもいいやって思ってたんですけどやっぱり空を見上げちゃうんですよね。柊二先輩が見てくれているようで。天文部まで失くしたくないなって思って、必死にPRしましたよ。悠紀先輩や柊二先輩、みんなであの頃やっていた活動を引き継いでいってくれる部員を探しました」

「真鍋…なんていい奴なんだ。感謝するよ」

照れ笑いをする真鍋が微笑ましかった。

「ところで先輩はなんで大学に?用事ですか?」

「あぁ、仕事で ”星から君へ” の担当をすることになったんだ」

「すごいじゃないですか!編集長ですか?」

「いやいや。編集長なんてまだまだだよ。コーナーの取材を担当させてもらうことになって。何を取材するかはまだ考え中でさ、ひとまず俺の原点でもある母校に足が向いただけだよ」

「そうなんですか。うちの天文部の取材なら僕から部員に話通すのでいつでも言ってくださいね」

「ありがとう」

「悠紀先輩、今日の夜は時間あります?会わせたい人がいるので久しぶりに飲みに行きませんか?」

「おぉいいね。ひょっとして彼女か?」

「はい、まぁ。」

 真鍋と俺は今晩会う約束をして俺はひとまず大学をあとにした。

 会社に戻った俺は編集長に大学の天文部の活動を取材してみたいと懇願したら賛成してくれ、俺はますますやる気に満ち溢れてきた。真鍋が作ってくれた新天文部を俺も見てみたくなった。


 仕事が終わって待ち合わせの店に入ると待っていたのは真鍋となんとあのさやかだった。

「先輩、こっち!」

「会わせたい人ってさやかのことだったのか?」

「悠紀先輩、お久しぶり」

「さやかぁー元気だったか?えっ、ちょっと待て、二人付き合ってんの?」

「そうだよ三年前からね。アタシ、いろんな男見てきて、騙されたり逃げられたり男運ないわって思ってたけど真鍋くんはいつもアタシを励ましてくれて何気にそばにいてくれて。気付いちゃったんだよね、こんな人と一緒にいれば幸せになれるんじゃないかって」

「おぉ、幸せそうだな、さやかよかったな。意外とお似合いだよ。ところで今仕事は?」

「アタシは銀行で働いてるよ。窓口で。ちゃんとやってるんだから」

「へぇーさやかが銀行の窓口でねぇー。柊二が聞くと驚くだろねぇー」

「そういえば、香世は?今でも会ってるのか?」

「それがねー香世は昔のアタシみたいでさぁー既婚者の男に騙されて不倫に陥っちゃったのよ。結局別れたんだけど傷心旅行も兼ねて世界一周旅行するって言って一ヶ月前に旅立っちゃったわけ」

「マジかよ?」

 俺は七星のことも聞こうと思ったがなかなか口に出せなかった。だがそれは真鍋とさやかには見透かされていた。

「先輩、七星ちゃんのことは聞かないんですか?」

「そうだよ。大学時代、七星のこと好きだったでしょ?」

俺は飲んでいたビールを吐き出しそうになり咽せた。

「あの頃、柊二先輩とつきあってたからなぁ。親友の彼女を好きになっちゃったんでしょ?バレバレだったよ。まぁ、真鍋くんや香世は気づいてなかったみたいだけどアタシは知ってたよ」

「さやかにはバレてたか…」

「やっぱり好きだったんですね。まさか今もってことはないでしょう?卒業してから七星ちゃんと会いましたか?」

「いや、全く会ってないしもう好きじゃないよ」

「アタシも七星とは部が廃部になってからたまにしか会ってなかったの。キャンパスが違ったでしょ。でも卒業式はウチらのキャンパスでやったから、その時に話したんだ。七星、教員免許取ったって言ってた。小学校の先生になるって。でもアタシ、数ヶ月後に七星に連絡してみたんだけど番号変わってて連絡取れなくなったのよ。就職に合わせてアパートも引越しするって言ってたから新しい住所とか聞きたかったんだけど」


 七星…教員免許取って夢が叶ったんだな。俺はそれを聞いて素直に嬉しかった。おそらく柊二も喜んでいるだろう。その日の帰り道、また空を見上げた。北斗七星とカシオペア座に挟まれるように北極星が北の空に輝いている。ふと思ってしまった…七星…会いたい。





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