表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/47

プロローグ:悲しみの始まり

 一組の男女が、どこからともなく駆けてきた。男は体中に傷を負い、手には赤子を抱えている。その必死の形相からは、生まれたばかりの我が子への深い愛情が読み取れる。

 女が悲痛な声で叫ぶ。


「お願い、この子と一緒に逃げて!」

「何を言っている、君も……!」

「いいえ、私は残ります。それが私の役目なのです。残らなければならないのです!」


 女は涙を溢れんばかりにためながらも、流さないよう必死に耐えている。言い切った言葉とは裏腹に、男に縋りつきたくて堪らないのだ。


「この子はどうするつもりだ。『力』に目覚めたら誰にも止められないぞ!?」

「――わかっています。これを……。いつもこの子に付けていて下さい。外でも『力』を抑えてくれます。お願い、どうか……」

「そうするしか……、そうしないと駄目なのか。もう、君と別れるしかないのか?」


 二人は出会い、過ごした。至上の幸せを得たはずだった。――何故、こんなことになってしまったのだろう。


「いいえ、私の存在は永遠です。きっとまた巡り会えます」

「――ああ、そうだな。君となら、きっと……」


 一陣の風が吹き、心の波を鎮めていく。

 未来への希望は、この腕の中に。だから明るい夢を見て、今は笑顔で別れよう。


「さあ、外へ行って下さい。もう王の間は閉ざします。どうかお元気で……」

「君も……。必ずまた会おう」

「ええ!」

「この子は絶対に守るから、安心してくれ。……絶対に、君にまた、会いに来る」


 男はそう言うと巨大な扉をくぐり、女の言う『外』へと向かった。



 そして、数日後。

 辿り着いた小さな村で、男は息を引き取った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ