はじめましてお師匠さま―1
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次の日、朝起きると嬉しいお客様が来ていた。
「かなでさま!」
「おはよう、雅ちゃん」
「おはようございます!!」
奏様が両手を広げてスタンバイしてくれたから、私もその腕の中に飛び込んだ。
ひとしきりお約束の再会を果たすと、そこでようやく部屋の中をよく見れた。
入ってきた時は障子の影になって気づかなかったけれど、もう一人男の子がいる。
ここでは見たことのない水干姿の男の子だ。きっと奏様の連れに違いない。
「はじめまして。みやびでしゅ。あなたはだぁれ?」
「僕? 僕は君の先輩だよ」
「せんぱい?」
「江戸期に神籍に名を連ねた千早よ。あなたの神修行の教師役として連れてきたの」
「ほぁー」
「……間抜け面」
ま、間抜け面言われたっ!!
ぐぬぬ。自覚があるだけに言い返せぬっ。
「千早、意地悪しないの。これはあなたの修行でもあるんだからね?」
「分かってるよ。常世の元主宰神の娘ということはいずれ冥府に行くこともあるだろう? もしかすると、冥府の主になるかもしれない。となると、あの男の主になる可能性もあるってことだ。恩を売る相手として不足ない。一石二鳥だからね」
「……そうか。あの男が雅ちゃんに仕える可能性があるなら消しちゃまずいわね。しまった、解毒薬作っとかなくちゃ」
……なんだか怖い話してる気がするから、聞かなかったフリをしておくよ?
でも、特訓の先生かぁ。今まで我流だったから、ちゃんと先生について学ぶのもいい機会かもしれない。
グギュルルルルゥ
真剣な顔つきで話し込んでいた奏様と千早様の顔がこちらに向けられた。
……そうです。お腹の音の犯人は私です。
だって、朝起きてすぐなんだもの。朝ご飯まだなんだもの。
……桐生さぁん!! 美味しい朝ご飯を所望します!!